アメリカ医師会雑誌(JAMA)が発表した新しい研究によると、明るい日光の下で1日わずか15分過ごすことで、子供の近視を予防できることがわかりました。この研究は学校ベースのクラスターランダム化臨床試験「上海タイムアウトドアで近視を減らす試験」の一環として行われ、2016~2018年にかけて、上海の小学生を対象に実施しました。
近視は、眼が光の焦点を正しく合わせることができず、遠くの物がぼやけて見える状態です。これは、眼球が長すぎるか、角膜が過度に湾曲しているために発生します。現在、日本では人口の30%以上が近視であり、その割合は増加傾向にあります。2050 年までに人口の約半数が近視になると予想しています。
研究の詳細
この研究では、約7歳の子供2976人を対象に、屋外で過ごし、日光に晒される時間をスマートウォッチで記録しました。2017年12月から2018年12月まで続いた研究期間中、子供たちは最低90日間、1日少なくとも6時間はスマートウォッチを着用していました。研究開始時点では、参加者の誰もが近視ではありませんでした。
研究では、子供たちが屋外で過ごす時間と、その際の光の強さ(明るさ)に基づいて12種類のパターンを調査しました。平均して、子供たちは1日90分を屋外で過ごし、平均照度は2345ルクスでした。屋外で過ごす時間の大半(約75%)は、連続して15分以上の時間を外で過ごすものでした。
近視進行の抑制
研究者たちは、近視の進行を抑えるための屋外曝露パターンを調査しました。その結果、少なくとも15分間、照度が2千ルクス以上の明るい日光の下で過ごすパターンが、近視の進行を抑えるのに効果的であることがわかりました。
研究者たちは、屋外で過ごす時間の長さだけでなく、特に明るい日光の下で連続して15分以上過ごすことが近視予防に重要であると結論付けました。
日常生活における照度の例
近視の進行を遅らせるためには、最低でも2千ルクスの光が必要であることが分かりました。参考として、オックスフォード・アカデミックの記事によると、中緯度で最も高く昇る満月の光は約0.05~0.2ルクスです。曇りの日の光強度は約1千ルクス、日中の屋外(直射日光なし)では1~2万5千ルクス、直射日光下では3万2千~13万ルクスに達します。
子供の近視
この研究では、近視は過去30年間で顕著に増加し、特に東アジアと東南アジアでは、若者の約90%が近視に悩まされていると報告しています。
「学齢期の子供たちの近視がより早期に発症する傾向は、将来、強度近視や病的近視がさらに深刻な流行となることを示唆しています」と研究者は述べています。
さらに、近視の増加は、緑内障や白内障、近視性黄斑症といった視力を脅かす疾患のリスクを高め、生活の質に影響を及ぼし、医療費の増加につながるとされています。
研究者たちはまた、中国の子供たちが他国、例えばオーストラリアやイギリスの子供たちよりも屋外で過ごす時間が少ないことに驚いたと述べています。これは、生活習慣や社会文化的な理由に加え、学校や宿題に費やす時間が多いことが原因だと考えられます。
結論
この研究は貴重な洞察を提供していますが、著者たちはいくつかの限界を認めています。研究対象が上海の子供に限られているため、結果は他の地域には当てはまらない可能性があります。また、1年間という期間では、屋外曝露と近視の進行との関係を完全に把握するには十分ではありません。
著者たちはさらに、スマートウォッチを用いたことで、光の照度が過小評価された可能性があると指摘しており、より長期間で、異なる地域や環境での研究が必要だと結論づけています。
最終的に著者たちは、近視を効果的に予防するためには、子供が屋外で過ごす合計時間と、一度に少なくとも15分間は十分に強い日光にさらされることの両方に焦点を当てた取り組みを行うべきだと提案しています。
(翻訳編集 清川茜)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。