コーヒーが老化防止と認知症・筋肉減少予防に効果的:最新研究

年齢を重ねると筋肉量が徐々に減っていき、時には認知機能にも影響が出ることがありますが、コーヒーを飲むことがその対策になるという研究結果が出ています。

コーヒーは、気分を高めるだけでなく、高齢者にとって多くの健康効果があることが分かっています。コーヒーに含まれるトリゴネリンという天然成分が、加齢による筋肉の減少(サルコペニア)を改善し、筋肉機能を維持するのに役立つことが研究で明らかになっています。

年を取ると筋肉量と機能が低下し、サルコペニアを引き起こす可能性があります。サルコペニアの主な特徴には、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)のレベル低下やミトコンドリアの機能不全があります。

 

最新の研究結果

『Nature Metabolism』誌の3月号に掲載された研究によると、トリゴネリンという成分が、筋肉を支える重要な役割を果たしているNAD+という物質の生成に役立つことがわかりました。トリゴネリンの投与量を増やすことで、サルコペニア患者の細胞内NAD+の量を増加させることができるといいます。老化したマウスにトリゴネリンを与えた実験では、ミトコンドリア(細胞のエネルギー工場)の活動が活性化し、筋力も向上しました。また、トリゴネリンを長期間補給することで、老化したマウスの前足の握力が大幅に向上しました。

ただし、サルコペニアは複数の要因で発症するため、トリゴネリンだけでは症状を完全に改善することはできないという点も研究で指摘されています。筋肉維持に役立つタンパク質やビタミンD、オメガ3脂肪酸などの栄養素と組み合わせて摂取することが重要です。

栄養と運動は、高齢者が健康な筋肉を保つために非常に大切です。シンガポール国立大学医学部の健康長寿トランスレーショナル研究プログラムのヴィンチェンツォ・ソレンティーノ助教授は、プレスリリースの中で、トリゴネリンの研究が健康的な長寿を実現し、加齢に伴う疾患への対策を進める可能性を高めたと述べています。

トリゴネリンは、コーヒー豆やフェヌグリークの種などの植物由来の食品に含まれています。

韓国の高齢男性1781人を対象にした研究によると、コーヒーをよく飲む人はサルコペニアのリスクが低いことが示されています。1日に3杯以上のコーヒーを飲む人は、1日に1杯未満の人と比べて、サルコペニアの発症リスクが顕著に低かったのです。ただし、1日に1杯または2杯のコーヒーを飲む人のリスク減少はそれほど大きくはありませんでした。

コーヒーに含まれるトリゴネリンという天然成分が、加齢による筋肉の減少(サルコペニア)を改善(プラナ / PIXTA)

 

コーヒーのメリットとデメリット

多くの人は健康への影響を深く考えずにコーヒーを飲みますが、コーヒーに関する議論は長年にわたって続いています。

コーヒーは約1千種類の化合物を含む複雑な飲み物です。人によってコーヒーやカフェインへの反応は異なり、摂取量によっても効果は大きく変わります。

ある研究では、中年期に1日あたり3〜5杯のコーヒーを飲む人は、高齢になってから認知症アルツハイマー病になるリスクが65%低いという研究結果があります。また、別の研究では、1日1〜2杯と軽くコーヒーを飲む人と比べて、1日6杯以上飲む人やコーヒーを飲まない人、カフェインを抜いたコーヒーを飲む人のほうが認知症になる可能性が高いという結果もあります。

『The New England Journal of Medicine』に2020年に掲載された研究では、1日3〜5杯のコーヒーを飲むことが、様々な慢性疾患のリスクを下げることに関連していると報告されています。しかし、過剰なカフェイン摂取は副作用を引き起こす可能性があるため、妊娠中または授乳中でない成人は1日のカフェイン摂取量を400mg以下に、妊娠中や授乳中の女性は200mg以下に抑えることが推奨されています。さらに、週に1千mg以上のカフェインを摂取することは、不安やうつ病のリスクを高めるという研究結果もあります。

コーヒー豆の種類や抽出方法によってカフェインの含有量は大きく変わるため、毎日コーヒーを飲む際には、製品のパッケージに記載されたカフェイン含有量を確認することが大切です。

さらに、市販のコーヒーにはクリームやシロップが加えられていることが多く、余分なカロリー、砂糖、飽和脂肪が含まれているため、ブラックコーヒーの健康効果が損なわれることに注意が必要です。

Ellen Wan
2007年から大紀元日本版に勤務しており、時事から健康分野まで幅広く携わっている。現在、記者として、新型コロナウイルスやコロナワクチン、コロナ後遺症、栄養学、慢性疾患、生活習慣病などを執筆。