コーヒーの成分が筋肉減少を防ぐ その秘密とは?

世界中で人気のある飲み物が、年齢を重ねる中で筋肉を強く、健康に保つための鍵を握っているかもしれません。

最新の研究によれば、コーヒーに含まれる自然由来の成分が、年齢とともに起こる筋肉減少を防ぐための秘密兵器となっているかもしれないのです。

 

筋肉を維持する分子

私たちの細胞エネルギー工場とも言えるミトコンドリアは、筋肉の健康を維持する上で欠かせない役割を担っています。加齢や疾患により筋肉量が減少して、筋力の低下、身体機能の低下をきたします。

年齢とともにこれらの細胞の部品が生成するエネルギーが減少することが一因です。さらに、細胞の再生を促し、ダメージから保護する重要な補酵素NAD+が加齢とともに減少する問題もあります。

研究では、必須アミノ酸のL-トリプトファンやビタミンB3の様々な形態(ニコチン酸、ニコチンアミド、ニコチンアミドリボシド、ニコチンアミド・モノヌクレオチド)など、食事から摂取する前駆体を通じてNAD+(体内の細胞で起こる代謝過程や反応に不可欠な物資)のレベルを向上させることが可能であると明らかになりました。

学術雑誌「Nature Metabolism」に掲載されたこの最新の研究で、科学者たちは、アルカリ性の化合物であるトリゴネリン(コーヒーに含まれる)が、加齢に伴う筋肉の変化を改善する可能性があるかどうかを調べました。

研究チームはマウスとワーム(虫類)の血液中のトリゴネリンの濃度を分析し、濃度が高いほど筋力と機能の向上と関連していることを見出しました。

一方で、トリゴネリンのレベルの低下は、サルコペニア(加齢や疾患により筋肉量減少、筋力の低下、身体機能の低下)をきたすことに関連していることが分かりました。

 

トリゴネリンが健康をサポート

トリゴネリンは構造的にビタミンB3と関係しており、一部の食品に含まれるほか、体内で自然に生成されます。

スイスのネスレリサーチ社でこの研究を行ったカタリーナ・フィッシャー氏(研究開発および科学コミュニケーションマネージャー)は、大紀元に対し、「血液中のトリゴネリンのレベルが低い高齢者は、年を取るにつれて筋肉量と筋力がより大きく減少することがわかっている」「トリゴネリンがNADの前駆物質であることも新たに明らかになった」と語っています。

フィッシャー氏によれば、実験動物にトリゴネリンを与えた結果、ミトコンドリアでの細胞のエネルギー生成が促進され、加齢による筋力機能の低下が改善し、寿命が延びる効果が見られたといいます。

彼女は、食品やサプリメントを通じてトリゴネリンの摂取を増やす臨床試験が、筋肉の健康を向上させるための新しい可能性を指摘しました。

 

トリゴネリンを含む食品

トリゴネリンは、多くの植物にあるアルカロイドの一種です。他の有名な植物由来の成分ほど知られていないかもしれませんが、トリゴネリンは様々な食品に含まれています。私たちが摂取するナイアシンの約5%がトリゴネリンに変わります。

 

コーヒー豆

コーヒー豆(雲水 / PIXTA)

トリゴネリンは特にコーヒー豆に多く含まれており、コーヒーの独特な苦みの原因となります。ただし、コーヒー豆を焙煎する際には、トリゴネリンの一部が分解され、健康に良いとされる別の栄養素とされるニコチン酸(ナイアシンやビタミンB3)に変わります。

 

フェヌグリークの種

フェヌグリークの種(Glucose / PIXTA)

インドや中東の料理でよく使われるフェヌグリーク種(コロハ)には、アルカロイドが約35%含まれており、種の主成分がトリゴネリンです。

 

その他の食品

トウモロコシ、玉ねぎ、グリーンピース、大豆、トマトなどにもトリゴネリンが含まれている(mits / PIXTA)

トリゴネリンは、大麦、マスクメロン、トウモロコシ、玉ねぎ、グリーンピース、大豆、トマトなど、他にも多くの食品に含まれています。また、やムール貝、甲殻類を食べることでトリゴネリンの摂取が可能です。

 

専門家:加齢に伴う筋肉減少に取り組むのに
遅すぎることはない

加齢とともに筋肉量が減るのは自然なことです。

老年学ソーシャルワーカーの資格を持つイシー・スミス氏は、大紀元に対し、サルコペニアは「運動不足、適切な栄養の欠如、肥満、身体活動の不足など、様々な要因で起こる」と言い、「高齢者は活動量が少ないため、65歳以上の人に、より多く見られるが、30〜40歳で始まることもある」と述べました。

しかし、老化を防ぐことはできなくても、加齢による筋肉量の減少をコントロールすることは可能です。

これは、適切な運動、バランスの良い食事、そして健康状態の管理によって実現できるでしょう。

「サルコペニアの影響を抑えるために筋肉を作り上げ、強化するのに遅すぎるということはない」とスミス氏は言います。

「いつでも新しい運動習慣を始めると、活動的なライフスタイルを送り続けることができます」

健康的な食生活を心がけ、専門家の指導のもとで適切な運動計画に取り組むことで、慢性疾患のリスクを抑えることが期待できるでしょう。

がん、感染症、神経変性疾患などのトピックを取り上げ、健康と医学の分野をレポート。また、男性の骨粗鬆症のリスクに関する記事で、2020年に米国整形外科医学会が主催するMedia Orthopedic Reporting Excellenceアワードで受賞。