子どもの教育に役立つ!漢字のふしぎ

漢字の神秘(1):薬

中国古代から伝わる神話によると、農業の始祖として崇められている「神農」は、何百種類もの草を自分で試し、その薬効を確かめたといいます。その知識は「漢方」として現代まで伝わり、その多くが植物だったことから、「草」の草冠が「薬」という文字に取り入れられました。

~百草を毒味したと伝えられる神農氏~

「薬」の下半分は、「楽」です。「楽」は、「楽しい」という意味のほかに、「音楽」という意味を持ちます。古代中国では、音楽が病気治癒のために用いられていたという伝説が残っています。

その昔、黄帝は蚩尤(しゆう)と戦争を繰り広げていた時、銅鑼を鳴らして相手を討ちました。敗軍の兵士たちは銅鑼の音で頭に衝撃を受けて倒れていましたが、黄帝は慈悲深い王であったため、これらの兵士を治癒させようと、金属でできた鐘のようなものを作らせました。

この楽器は、中間が銅でできており、両辺に絹糸の弦が渡してあり、木製の棚にかけて音を奏でます。地上に横たわっていた蚩尤の兵士たちは、この音色を聞いて魂が癒され、復活したといいます。

また、「楽」の真ん中の文字は「白」で、色を表すほかに、楽器を奏でるときに使う「ばち」という意味合いも持つことから、音楽に病気治癒の効果があることを、「薬」という文字が教えてくれるのです。