米衛星画像解析企業ブラックスカイは、中国資本によって建設されるカンボジアの港湾に、空母が接岸可能な桟橋が建設されているのを確認した(プレスリリース)

スリランカ、中国の次なる海外基地か カンボジアにも桟橋建設…「空母も寄港可」

複数の報告書によると、中国共産党は次の海外における海軍基地の設置場所として、スリランカを最も有力な候補地と見ている可能性がある。チャイナマネーが潤沢に投じられるカンボジアも最近、空母も寄港可能な桟橋の建設が確認された。中国は海外に軍事基地を建設することで、世界覇権へのさらなる勢力拡大を試みている。

米国のウィリアム&メアリー大学(W&M)のエイドデータ研究室が7月27日に発表した評価報告書によれば、中国企業は2000年から2021年までに海外78の港を開発するため約300億ドルを費やした。そのうち21.9億ドルと最も多く投資を受けたハンバントタ港が、中国の次なる海外基地となる可能性があると指摘した。

数ある港湾のなかで、なぜハンバントタ港なのか。エイドデータは、中国にとって初となる海外基地を建設したジブチとの類似点をあげる。数年間かけて民間企業が港湾や隣接の商業港を開発・運営し、影響力を拡大していったという。ハンバントタ港に隣接するコロンボ港は今年4月、現地の地方政府が港の大部分の所有権を中国の企業にリースすることで合意している。

スリランカはインド洋の要衝と呼ばれ、年間6万隻もの船やタンカーが行き来する。ハンバントタ港は2017年7月より99年間にわたり中国国有企業・招商局港口にリースされた。

エイドデータは資本のほか世論調査、国連での中国への賛成数などを指数とした。18年、中国はスリランカの海軍にフリゲート艦を寄贈している。昨年には中国軍所属の調査船が寄港している。このほか、スリランカの高所得者層から一般市民まで、中国に対して好意的な考えを抱いている。

空母も寄港可

さらに、この報告書の前日には、衛星写真から中国のアジア拡張を示す別の報告が公にされた。米国の衛星写真会社、ブラックスカイが公開した画像には、リアム海軍基地(カンボジア、シアヌークビル)がほぼ完成に近づいているという。その施設には空母を停泊させることができる新しい桟橋が写っていた。

こうした衛星写真をみて、カンボジアに中国の次なる基地ができるのではないかとみる専門家も少なくない。

「リアム基地の開発の速度は、中国の海外基地イニシアチブの背後にある関連を否定できないものだ」と、防衛のための民主主義基金のシニアアドバイザー、クレイグ・シングルトン氏は見解を示した。「カンボジアは中国の第二の海外海軍港を受け入れる意欲がある。北京の戦略的な軍事力をインド洋に拡大する能力を増強させるだろう」

リアム基地の桟橋とジブチの人民解放軍支援基地の軍事桟橋との間には、「ほぼ完全な類似性」がみられるとシングルトン氏はいう。「リアム基地の西岸にある斜めに深い水深の桟橋と、両方の主要な桟橋は長さ363メートル。中国の海軍兵器庫のどの船も対応可能で、新型の300メートル長の003型航空母艦『福建』も含まれる」と述べている。

ブラックスカイによれば、リアム基地では南岸にある3万8000平方メートルの人工半島の拡張工事や、本部施設、兵舎、燃料貯蔵エリアなど軍事用の建築物の開発も確認できるという。

カンボジアは否定「偽情報だ」

米国防総省はカンボジアのリアム海軍基地が中国のインド太平洋地域における最初の海外基地になると懸念している。しかし、カンボジアは海外の軍にリアム港は使われることはないと、米側の指摘を否定している。

カンボジア国防省のスポークスマンであるチュム・ソチート氏は7月の記者会見で、昨年6月に着工したリアム基地の改修工事が間もなく完了することを明らかにした。正式な開港日は未定だ。また、中国が基地を利用して米国の影響力に対抗するとの外部からの指摘を否定した。

「これらの情報は真実ではない。カンボジアは小さな国だが、一部の国々からは悪意を持たれている」と述べた。さらに、「一部の国々は真実を認めず、偽情報を広めている」と付け加えた。

中国が資金提供し、中国軍の建設要員が建設に携わるこのリアム基地の改修目的は、船舶や訪問海軍の港だけでないとの見立てが、西側に広がっている。

昨年8月、米国務長官ブリンケン氏はカンボジア政府に対し、中国の資金を用いた海軍基地の近代化改造について問題提起している。ブリンケン氏はプノンペン訪問時に、海軍基地が中国軍専用となった場合、東南アジア地域への脅威となるだろうと率直に警告を発した。

海軍基地について、ブリンケン氏は「カンボジアが関連国からの圧力に屈しないよう、真に独立した外交政策を維持することが第一優先だ」と、米国の懸念を伝えたという。

しかし、外交専門家によれば、90年代末より実権を握るフン・セン首相と中国共産党とは「蜜月関係」にあり、クメール・ルージュを支援したとの仇を忘れ、豊富な投資を甘受し、安全保障領域まで影響力は広がり続ける(ディプロマット誌)と指摘する。

中国の軍事的影響力の拡張は、アジアや中東のみならずアフリカにも広がる。エイドデータによると、中国の国有企業は2000年から2021年までの間、約300億ドルの融資と投資を提供し、46カ国で78の港を建設または拡張させた。赤道ギニアのバタ港、パキスタンのグワダル港、カメルーンのクリビ港が、向こう2から5年で中国軍の基地となる可能性のある場所として挙げられている。

このほか、エイドデータによれば、中国の海洋戦略は商業港湾と軍事港湾の投資に関する境界が曖昧になっており、商業港湾も必要に応じて軍事目的に活用されかねないと指摘する。

米国防総省の中国の軍事力・安全保障の進展に関する年次報告書2020によれば、中国は今後タイ、インドネシア、パキスタンなどで、さらに多くの海外軍事施設を設立する可能性があるという。

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