「中国語ではトイレのことを『厠所』<かわやどころ>と書きます」と言うと、「<かわや>って何ですか」と返事がきます。「川屋」(川の上に掛けて作った小屋)とか、「側屋(かわや)」(家の側に立てた小屋)に「厠」の字を当てたのが語源のようですが、いずれにしても、若い人にとってはもはや死語と言えるでしょう。
ところで、その「厠」が火事になったらどうなるでしょうか。「クソ」が焼けて、「焼けクソ」(自棄糞)です。「こうなったらヤケクソだ!」と言いたいとき、「厠の火事だ!」と言うのです。こんな話、どこかで聞いたことがありませんか?そうです。以前、中国語の「歇後語」をご紹介しましたが、これはその日本語版です。
他にもこんなのがあります。「乞食のお粥→湯(言う)ばかり」「手水鉢の金魚→杓(癪)にさわる」「鐘撞きの昼寝→イチゴン(一言)もない」等々、調べれば次から次に出てきます。
ただ、これらのしゃれことば、日本では特に大阪あたりで明治のころまでは盛んに使われていたようですが、今はほとんど耳にすることはありません。ところが、中国語の「歇後語」は違います。
老若男女を問わず、『狗拿耗子(犬がねずみを捕る)』と来れば『多管閑事(余計なおせっかいだ)』と続き、『千里送鵞毛(遠方からガチョウの羽を送る)』と来れば『礼軽人意重(物は粗末でも心がこもる)』と続くのです。正に、今も人々の生活に息づき、会話を豊かにするしゃれた表現だと言えます。
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