これはイメージ写真です。(Shutterstock)

上半身だけの演説家「将来の夢はカタール大使」

ここはアラビア半島にあるカタール

ガニム・ムフタさんは、今年20歳になる元気な若者です。

彼は今、その明るい性格とにこやかな笑顔、そして雄弁な演説力によって聴衆を魅了する「モチベーショナル・スピーカー(やる気を起こさせるスピーカー)」を務めています。

彼の演説を(目を閉じて)聞けば、それは豊かな表現力と説得力に満ちていて、普通の人と何の変りもないことを知るでしょう。

そうです。彼は「普通の人と何の変りもない」のです。

彼が少し変わっている点は「生まれつき下半身がなかった」ということだけですから。

(ガニム・ムフタさんの写真は、こちらです)

ガニムさんが、双子の弟であるアフマドさんと一緒に、母親であるエマン・オバイドリーさんの胎内にいたときのことです。

医師は両親に、ガニムさんの体に重大な問題があることを告げました。

「この子は、脚がありません」。

ガニムさんは脚がない状態で生まれてくる「尾部退行症候群」という珍しい病気をもって、いま母体のなかにいることが発覚したのです。

以来、ほんの短い間のことですが、母のエマン・オバイドリーさんと父のムハンマド・ムフタさんの周囲では、ちょっとした「ざわつき」がありました。

「重度の障害をもつ子が生まれても、自分自身と両親に無限の苦痛を与えるだけだ」。

つまり「双子の片方を(中絶して)諦めたほうがいい」というのが、周囲の大方の意見でした。

これに対して、両親の意思は迷うことなく、完全に固まっていました。

「二人とも立派に育ててみせる。私たちは、すでに準備万端ととのえてある」。

それを聞いて、ざわついていた周囲は、あっという間に静かになりました。

「大紀元」の取材に対して、エマンさんは、こう答えています。

「私は、この子の左足になる。夫は、この子の右足になる。夫婦で、そう決意したのです」

ガニムさんとアフマドさんの兄弟は2002年5月5日、無事に生まれました。

ガニムさんは実際、生まれてから様々な困難に直面してきました。

この「変わった身体」のため、学校ではクラスメートに嘲笑され、いじめられたことも確かにありました。

こうした周囲や学校での奇異の目に対して、両親はガニムさんを励ますとともに、自分たちで作った小冊子を地域に無料配布して、「上半身だけで元気に生きる息子」について多くの人が理解できるようにしました。

ガニムさんの学業は、始めは困難もありましたが、最終的には国際高校を優秀な成績で卒業し、現在は英国の大学で政治学を専攻しています。

やっているのは学業だけではありません。ガニムさんのソーシャルメディアの写真や映像には、スキューバダイビング水泳、スケートボード、ウエイトリフティングロッククライミングなど、想像できるあらゆるスポーツに「上半身で」取り組んでいる様子が映っています。

こうなると、もはや誰も彼を止めることはできないでしょう。

それだけでなくガニムさんは、冒頭に触れた「モチベーショナル・スピーカー」も含めて、障害者への理解と認識を深めるための講演活動も積極的に行っています。

ガニムさんは将来、外国に駐在するカタール大使になることを夢見ているそうです。

(翻訳編集・鳥飼聡)

関連記事
バンクーバー出身のバネッサさんは、第二子を身ごもっていました。お腹の中にいる赤ちゃんにアイビーと名付けかわいがっていました。しかし、いつもの定期健診の後、なぜか助産師がかかってきたのです。バネッサはさんは悪い予感がしました。
妻に先立たれ、ダウン症を患う6歳の女の子のシングルファーザーとなったアメリカのカントリー歌手、ローリー・フィークさん(55)。ローリーさんが書き綴る力強く感動的なブログが話題となり、多くの人の心を捉えています。
米国のある一人の男性が呼吸困難の治療のためにニューヨークの病院を受診したところ、鼻腔から歯が生えていると診断された。 医師がこの歯を取り除いた後、この男性はようやく普通に呼吸できるようになったという。
多くの人は、感情の健康への影響を軽く見ているのではないだろうか。その理由の一つは、私たちが物質面から病気を見ることに慣れすぎているからで、もう一つの理由は、ほとんどの人が、感情が病気を引き起こす事実を信じていないことだ