探査機パーカー・ソーラー・プローブが太陽の大気圏に入るイメージ図。(NASA)

米探査機が初めて太陽の大気圏に入り、驚きの映像を送信した

米航空宇宙局 (NASA)の太陽探査機パーカー・ソーラー・プローブ(Parker Solar Probe)は、毎回太陽を通過するたびに、太陽に接近します。最近、10回目となる通過で初めて太陽の大気圏に突入しました。

今回、パーカー探査機が太陽に最接近したとき、太陽との距離はわずか530万マイルでした。この距離は地球と太陽の距離の約5%です。太陽の半径は約43万マイルしかなく、比較すると太陽の大気圏の厚さがものすごく大きいことがわかります。

太陽とこんなに近い距離で接触するのは、NASAの探査機の断熱板にとって試練です。NASAが設計した、厚さ4.5インチの断熱板は、1371度の熱からカメラなどを保護できます。

高温に直面することとは別に、探査機の高速化も課題の一つです。パーカー探査機のスピードはすでに時速36万4600マイルに達しており、これは毎秒101マイルに相当します。こんな高速で飛行する場合、空中に浮遊している小さな顆粒にぶつかると、探査機にとって非常に危険です。

疑似ストリームを行き来する映像

NASAによると、今回の太陽通過中、パーカー探査機は何度も太陽コロナに出入りしたといいます。コロナ層は太陽大気の最外層です。コロナの内部では、「擬似ストリーマー」 (pseudostreamer)と呼ばれる物質に遭遇します。NASAによると、それは太陽表面にあり、帯状の構造をしているといいます。大量の高エネルギー粒子からできたもので、日食時に地球から見られます。

 

パーカー探査機は、これらの高エネルギー粒子の間を行き来するときの映像を撮影しました。(上の動画参照)

あるとき、銀河が深宇宙の背景の中に出現し、明るい恒星をいくつもはっきりと見ることができました。

嵐の目に入る

NASAによると、通常、探査機が太陽風の中を通過する際、周りはもくもくとした粒子の「カーテン」のようになり、いったんコロナに入ると、周囲はぐっと静かになります。「擬似ストリーマーを通り抜けると、嵐の目に入ったようだ」といいます。

太陽コロナ層に入ると、太陽磁場の強さが、太陽から放り出された粒子を制御するのに十分であり、粒子がより整然と動くようになるためだとNASAは分析しています。太陽風も太陽から放り出された物質で構成されていますが、太陽の磁場はそれらを秩序ある状態に制御する強さがありません。

太陽の大気圏の表面は滑らかではない

科学者は太陽の引力と磁場が粒子を制御できる最も遠い範囲を「アルヴェーン臨界面」(Alfvén critical surface) と呼び、つまり太陽大気の境界面でもあります。それ以外の物質は、太陽風に属します。太陽風は、太陽からのさまざまな粒子でできた物質でもあり、太陽系のさまざまなところまで吹き付けます。

今回、探査機が太陽コロナに到達したとき、アルヴェーン臨界面は滑らかな球面ではなく、隆起した地域と窪んだ谷間のような構造があることが判明しました。これは、太陽大気圏の表面が滑らかな球面ではなく、でこぼこの状態であることを意味しています。

以前、科学者は理論だけで、アルヴェーン臨界面から太陽表面までの距離が太陽半径の約10~20倍であると予測していました。今回探査したデータは、アルヴェーン臨界面から太陽表面までの距離が太陽半径の18.8倍、つまり810万マイルあることを示しています。パーカー探査機は最終的に、太陽から太陽半径8.86倍の383万マイルしか離れていない場所まで飛ぶ予定です。

(翻訳・橋本 龍殻)

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