歯は、ただの白い固まりではなく、食物を咀嚼することで体の隅々まで栄養を供給する器官です。
歯は体の大切な「器官」です
人間の体は様々な組織、内臓、器官を含み、その中で細胞は絶えず死滅と再生を繰り返しています。現在の研究によると、人の歯の中には「Dentinal Fluid Transport(象牙質内液DFT)」という液体が実際に流れているそうです。
乳歯が抜け、永久歯が生えてきたら、もう歯は変わらないと思われがちです。しかし、長い人生でずっと同じ歯を使っていて、衝突や無理な力で歯にひびが入ることもあります。このとき、DFTは必要な栄養を送って歯を修復します。
歯周病菌を抑えて、症状の悪化を防ぐこともします。歯周病の原因菌が歯肉に入ると、DFTの免疫細胞が病原菌を死滅させるのです。
このDFTが「逆流」し始めると虫歯になりやすくなる、と言います。血糖の上昇が緩やかになるほど、DFTの逆流を避けることができます。
虫歯の確率と血糖値の関係
DFT (象牙質内液)が逆流を始めると、口内の細菌が歯に入り、神経を刺激して虫歯や痛みを引き起こします。
しかし、なかには砂糖を摂取してもDFTの逆流が起こらない人もいます。
以前、日本の歯科クリニックへ、ある人が歯の健康診断で訪れました。その人は「もう何年も歯医者さんに行っていません」と歯科医に告げました。それだけでなく、毎晩チョコレートを1箱食べ、歯も磨かずにそのまま寝てしまう生活を10年続けたと言います。
この人は、かなり虫歯があるだろうと思われましたが、歯科医が検査してみたら虫歯は1本もありませんでした。
その場でチョコレートを食べてもらい、血糖値を測りました。通常チョコレートなどGI値の高い甘いものを食べると血糖値が急上昇するのですが、その人の血糖上昇速度は非常に穏やかだったのです。
当時はまだ、歯科医療のなかでDFTという概念は知られていなかったのですが、血糖の急上昇と虫歯になりやすい体質とは、何か大きな関連があることが判りつつました。
「血糖値が急上昇しない食事」をとる
米カリフォルニア州の歯科医であるスコット・テイラー博士も、血糖のゆるやかな上昇がDFTの停止と逆流を防ぎ、虫歯を予防するのに役立つと指摘しています。
テイラー博士は、血糖値の上昇速度を緩やかにする3つの方法を提案しています。
1、食べ物の「全てを食べる」
理想的には、加工食品を避け、自然な「全食」を選んで食べることです。全食とは「食材のすべての部位」のことで、たとえばリンゴはよく洗ってから皮ごと食べ、米は精製した白米ではなく玄米を食べる、つまり部位を一切取らずに全部を食べることです。
食材の部位ごとに栄養があるのですが、特に日本人は栄養のある果物の皮を剥いて捨てがちです。多くの外国人はリンゴを皮ごと食べます。オーストラリア人はキウイを皮ごと食べています。
2、GI値の高い食品は避ける
GI値はグリセミック指数とも呼ばれ、食品が血糖値を上昇させる速度です。GI値が低い食品ほど、急激な血糖上昇は起こりにくいということになります。
一般的にはGI値が60以下の食物が望ましいです。逆にGI値が60以上のものは、血糖値が上がるだけでなく虫歯にもなりやすいのです。
同じ食材でも、「全食」のGI値はかなり低いことが多いです。例えば、米糠を取り除いた白米のGI値は84とかなり高いですが、玄米のGI値は56しかありません。そのため、白米より玄米のほうが、血糖が上がりにくく栄養も豊富であり、虫歯にもなりにくいのです。
3、脂溶性ビタミンの摂取
脂溶性ビタミンとは、油脂に溶けるビタミンのことで、例えばビタミンA、D、E、Kなどです。食後の血糖上昇を抑えるためには、ミネラルを大量に摂取する必要がありますが、フランスのエスト・ベリック博士は、虫歯の予防には十分なミネラルが不可欠で、脂溶性ビタミンはミネラルの吸収と調整に役立つと指摘しています。
前述のスコット・テイラー博士も同様の理由から、脂溶性ビタミンを豊富に含む「鱈(たら)の肝油」の補給が日常的に可能であることを示唆しています。
(翻訳編集・鳥飼聡)
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