中国広東省では、2021年5月から企業に対する電力制限が断続的に実施されている(Photo by Matt Cardy/Getty Images)

中国電力不足、日系企業も影響… 無通知の電力停止で設備破損やけがの恐れ

世界最大の石炭消費国である中国は、国内電力の70%を石炭発電で賄っている。今年後半から、エネルギー資源価格の高騰と電力供給の低下により、地方自治体が電力使用の制限を実施している。日系企業の多い広東省でも広い範囲で供給制限が行われており、工場の稼働に支障をきたしている。

日本貿易振興機構(ジェトロ)広東省担当は9月、同省各地の進出日系企業の電力制限状況を確認したところ、回答した180社のうち、半数あまりが週4以上の電力制限を受けていることがわかった。6社は週7の制限にあっているという。広州市では事前予告なしに電力供給を断たれたケースもあり、生産設備の破損や従業員のケガなど、事故のリスクが高まっている。

この調査によると、同省では今年5月から企業に対する電力制限を断続的に実施している。電力制限が確認されたのは、東莞市が49社、広州市48社、仏山市32社、中山市23社、恵州市19社、深セン市5社、そのほか珠海市、肇慶市、開平市、鶴山市でそれぞれ1社。

業種別では、自動車関連、電気電子関連、プラスチック製品製造関連、金属製品製造関連の企業で電力制限を受ける企業が多いという。ジェトロは9月26日、広東省商務庁とエネルギー局に対し、これら日系企業の状況と早期改善を求める要請を行った。

この電力制限の影響を被ったのは日系企業だけではない。アップルやテスラの部品供給企業もまた、当局からの電力制限命令に応じて一時の生産停止を発表した。

広東省当局は電力不足の原因について、高温による電力負荷の増加、天然ガスや石炭価格の高騰による電力用資源の供給不足などを挙げている。省の電力の約30%は、近隣の雲南省の水力発電に頼っている。しかし、例年より雨が少ないことや高温の日が続いたため同省の貯水池が枯渇し、水力電力の生産不足が生じた。

ロイター通信によると、当局は浙江省、江蘇省、広東省など製造拠点が集中する9つの省・地域で電力供給の制限が行っている。

石炭・化石燃料への依存度が高い東北部でも、電力供給制限が敷かれている。中国メディアの新京報によれば、遼寧省、吉林省、黒竜江省当局が消費電力の抑制や供給量の制限を実施するなどの対応を行なっているという。

中央政府が2019年、地方政府に対して炭素排出量の制限を要求した。エネルギー関連コンサル企業ランタオグループ(Lantau Group)所属のアナリスト、デービッド・フィッシュマン(David Fishman)は、「(8月に)多くの省が排出量削減目標を超過したとの指摘を受け、すぐに電力供給制限を開始した」と米誌フォーチュンに語った。

中国共産党当局が環境対策として石炭を主燃料とする石炭火力発電所の発電抑制を行なっていることも拍車をかけた。中国の習近平国家主席は2020年、二酸化炭素(CO2)排出量を大幅に削減する計画を発表。2060年までに、CO2排出量と吸収量を差し引きゼロにするカーボンニュートラルを目指すと表明した。

(佐渡道世)

関連記事
通学中の学生を狙った社会報復事件が絶えない中国、学校前は厳重警備。
その非人道的な所業から多くの国から停止を求められている中共の臓器狩り。中国共産党は否定しているが、今回、党内部の官僚から内部告発があった。告発者は「これはすでに産業化された仕組みだ」と述べている
10年前、中共は「中国製造2025」計画を掲げハイテク製造業強国を目指した。しかし現在、中共は知的財産権侵害や不公正競争の指摘を受けている。EVや高速鉄道で進展も、核心的な技術は不十分だ。
中国の資本市場から11月に457億ドルの資金が流出し、過去最大を記録。トランプ氏の関税政策への懸念と中国経済の不安定さが主因。中国政府の景気刺激策は市場の期待に応えられず、人民元も下落。習近平は窮地に陥っている