「いびつな美意識」女っぽい男性芸能人を排除する中国 専門家「起こりうる戦争への備え」
中国当局は最近、国内で流行っている「娘炮(女っぽい男性)文化」を正そうとしている。中国国家ラジオテレビ総局はこのほど、エンターテインメント業界および芸能界の男性の女性化の風潮を食い止めるという方針を明らかにした。一部の評論家は、文化の是正というよりも、将来起こりうる戦争に備えて、硬派な男性に憧れる風潮を作り出すためと論評した。
中国国家ラジオテレビ総局などは9月2日、オンライン通知で、全国のメディアやエンタメ施設などに対して「娘炮などの歪んだ美意識を根絶すべきだ」と主張した。
1日にも元国営メディア主筆の李光滿氏は「誰でも感じ取れる、深刻な変革は今進行している最中だ」と題する論説を発表した。同氏は論説で、中国の芸能人の一部は、韓国のKポップや日米アーティストから影響を受けており、彼らは資本主義の価値観を中国に持ち込む「娘炮」アイドルだと糾弾し、「男らしい、強靭な人民中心の文化」を打ち立てなければならないとぶち上げた。
政府の通達を受けて、韓国のKポップから影響を受けた人気若手俳優たちは続々と精悍なイメージに変えた。高視聴率を叩き出す「娘炮ドラマ」の放送は相次ぎ中止または延期になった。
中国共産党機関紙・人民日報は過去に、「男らしさは何か」というテーマの社説で、軍人の勇敢さと精神的な魅力を称賛し、娘炮文化を酷評した。
アメリカ在住の中国人文化評論家・馬建国(仮名、ま けんこく)氏は米国営放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材で、中国社会の審美感は中国共産党の都合によって七変化していると指摘した。
「文化大革命中に、女性が高度にオス化した。すべては『革命のニーズのため』だった。いっぽう、筋肉もりもりのハリウッドスター・スタローンは一度も『男性のお手本』にならなった」
「娘炮養成所」と揶揄される中国の地方テレビ局・湖南衛視がこのほど、同局人気バラエティ番組の出演者に、自粛事項一覧を渡した。唇を噛むこと、イタズラの萌え表情、腰や股関節をねじり回す動作を「慎重に扱うよう」という内容だったという。
現在、男性芸能人はこぞってイメチェンして、女っぽさを封印している。
韓国アイドルグループEXOの元メンバー黃子韜は、トレードマークのスモーキーメイクとイヤリング姿を一変して、ソーシャルメディアにキャップをかぶった上半身裸のフィットネス写真を投稿し、筋骨隆々の体を披露した。
人気俳優の王一博は、以前の黄色い髪のイヤリング姿が黒の短い髪に変わり、イヤリングも消えた。いつも赤い唇、白い歯、ばっちり化粧のタレント蔡徐坤は、あごひげを生やし黒い短髪の姿に変貌した。
中国電影(映画)文学学会の副会長、脚本家の王海林氏は、芸能界の男性メス化風潮を常に批判する一人である。
同氏はかつて「男優は非常に重要な立場にあり、国の意志の表れでもある」と主張していた。「アメリカの文化は強い自信を帯びており、強烈な男性(オス)の気性を含んでいる。世界への責任感と抑止力はあらゆる文化財から表れている」とアメリカの精神を学ぶべきであることを熱弁し、「我が国も勝者の文化、向上心のある文化を構築すべき」と注文をつけた。
在日中国人評論家の五岳散人(ごがくさんにん)氏はVOAの取材で、「国にとって、有事の際にスパルタ戦士のような男性は好都合である」などと述べた。
前出の馬建国氏も女っぽい男性芸能人の排除について、「習近平氏が戦争のことを念頭に置いているからだ。女っぽい男性は反抗的にならないため、平時に管理しやすいが、有事の際には非常に深刻な問題になる。娘炮を排除するのは、文化的な目的ではなく、将来起こりうる戦争に備えるためだ」との考えを示した。
2020年5月、中国人民政治協商会議のある常任委員は「青少年の女性化を防ぐための提案書」で、中国の若者は弱々しく自信に欠け、臆病者が多いという現象が顕著になったと危惧し、このままでは国家の存続と発展に不利だと述べた。
(翻訳編集・叶子)