2021年7月28日、タリバンの共同創設者アブドゥル・ガニ・バラダル師(左)と中国の王毅外相(右)が中国の天津で会談した(AFP)

アフガン在住のウイグル人、中国への強制送還に戦々恐々 「中国の援助と引き換えに」

イスラム主義勢力タリバンがアフガニスタン政権を掌握した後、中国政府と緊密な関係を結ぶ姿勢を見せている。アフガニスタンにいる新疆ウイグル人は、強制送還されるのではないかと怯えているという。米国営放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)が3日、報じた。

タリバンのスポークスマンは2日、中国政府はタリバンの「主要なパートナー」になる見通しで、アフガンの復興は主に中国資本に頼ると述べた。

ウイグル人の一人、首都カブールに住む宝飾品商のムハンマドさんは、VOAの取材に「いつになく身の安全を心配している」と漏らした。

ムハンマドさんは、タリバンは躊躇することなく、中国の財政援助と引き換えにウイグル人を差し出すだろうと危惧している。

ムハンマドさんの両親は1961年、中国新疆ウイグル自治区からアフガンに亡命した。彼自身はアフガンで生まれ、いまは5人の子どもの父親だという。

テロという大義名分のもとで、ウイグル人を逮捕

7月、タリバン代表団が天津で中国の王毅外相と会談した。王外相はアフガン国内の東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)の取り締まりに協力するよう要求した。タリバン側は、アフガン国内で中国に不利な活動を行ういかなる勢力も許さないと約束した。

ETIMは、国連に国際テロ組織と指定されている。アメリカは「確固たる証拠がない」という理由で、2020年にテロ組織の認定を解除した。

前出のムハンマドさんは、中国政府がアフガンにいるウイグル人全員をETIMとして扱う恐れがあると懸念を示した。

タリバンは過去にウイグル人を中国に引き渡していた

ワシントンに本拠を置く「中央アジア問題のためのオクサス協会(Oxus Society for Central Asian Affairs)」のアナリスト、ブラッドリー・ジャーディン氏は、ムハンマドさんの懸念は決して杞憂ではないと指摘した。

「タリバンの支配下で、ウイグル人の強制送還は過去にあった。2000年、中国の駐パキスタン大使・盧樹林氏と当時のタリバン最高指導者ムラー・オマル師がカンダハールで会談した直後、13人のウイグル人がタリバンによって中国に引き渡された」

高齢女性:家族が新疆ウイグル自治区の収容所に投獄されないか心配

1961年からアフガンに移住したカブールのウイグル人女性はVOAに、いま最も恐れているのは、孫など家族が新疆の収容所に収監されることだと語った。

匿名を条件に取材に応じたこの女性は、「中国政府の抑圧から逃れるために、60年前、両親は5歳の私をアフガンに連れてきた。でも、いまの私には子孫たちを安全なところに連れていく術がない」と落胆している。

アフガンのウイグル人が中国に強制送還されないよう、国際社会に救援の手を差し伸べてほしいと、彼女は呼びかけた。

中国当局が新疆ウイグル自治区の収容所に100万人以上のウイグル人を勾留しているため、欧米諸国やアムネスティ・インターナショナルなど国際人権団体は、中国政府がジェノサイド(集団虐殺)と人道に対する罪を犯していると非難してきた。

中国はこれらの主張を否定し、収容所は宗教的過激主義に傾倒したウイグル人のための職業および法律の訓練施設だとしている。

タリバンと中国政府はウイグル人を取引する可能性が高い

2019年、アフガンからトルコのイスタンブールに移住したというウイグル人のアブドゥルアジズ・ナセリさんは、「タリバンはウイグル人たちを中国に引き渡し、そして、知らんぷりするだろう」と述べた。

アフガニスタンにいる友人や親戚の話によると、タリバンがすでに彼らの自宅に押し入り、チェックしているという。アフガンの主要都市に住むウイグル人の居住許可書には「華僑」「ウイグル人」の印が押されている。

ワシントンにある人権団体、ウイグル人権プロジェクト(UHRP)の幹部ヘンリーク・サジェフスキー氏は、タリバンがウイグル人を中国に引き渡す可能性が高いと語った。

「中国政府と長期にわたり関係を保ってきたカブールの新政権は今、中国から政治や経済的支援を切望している」とサジェフスキー氏は指摘した。

同氏は、タリバンと中国共産党政権のウイグル人を保護するなどの発言は、ただのリップサービスに過ぎないと見ている。

アフガンには現在、約2000人のウイグル系住民が居住している。

(翻訳編集・叶子)

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