タリバン、国家運営に苦戦 経済混乱・人道危機に懸念
[1日 ロイター] – 米軍が撤収を完了したアフガニスタンでは、イスラム主義組織タリバンが国家機能の維持に苦戦しており、海外では人道危機への警戒感も強まっている。
タリバンは首都カブール制圧から2週間が経過した現在も、新政権の樹立や統治方針の発表には至っていない。行政に空白が生じる中、物価は高騰し、銀行には現金を引き出そうとする人々の長い列ができている。多くのオフィスや店舗も休業が続いている。
武装したタリバン戦闘員がカブールをコントロールしているが、外国人や西側諸国に協力してきたアフガン人が多数出国したことを受け、タリバンは病院や政府組織の運営維持に苦戦している。
銀行関係者によると、タリバンが任命したアフガン中央銀行のハッジ・モハンマド・イドリス総裁代行は、タリバンが金融システムの完全な稼働を望んでいると銀行側に伝えたが、そのための資金をどのように供給するかについては詳細をほとんど明らかにしていないという。
中東のテレビ局、アルジャジーラは、現在停止されているカブール空港の運営再開について話し合うため、タリバンの要請でカタールの技術専門家が現地入りしたと報じた。
アフガンの隣国でタリバンと緊密な関係を持つパキスタンの外相は、アフガンで数日中に新たな「コンセンサス政府」が樹立されるとの見方を示した。
こうした中、北東部パンジシール州では、地域武装勢力や旧政府軍のメンバーがアフマド・マスード氏の指揮下でタリバンへの抵抗を続けている。タリバン幹部は反対派勢力に武器を捨てて交渉するよう呼び掛け、「アフガニスタン・イスラム首長国は全てのアフガン人の国だ」と強調した。
<物価高騰>
タリバンにとって当面の急務は経済崩壊の回避だ。アフガン中銀が主に海外に保有している約100億ドルの資産にタリバンが早期にアクセスできる可能性は低い。
タリバンは銀行に営業再開を命じたが、1週間当たりの現金引き出し額を厳しく制限している。
銀行関係者によると、イドリス中銀総裁代行は今週、銀行協会のメンバーらと面会し、タリバンが流動性の問題や物価高騰への対応策を模索していると述べたという。
カブール住民は「何もかもが高い。日に日に物価が上がっている」と語った。
<隣国への出国>
タリバンの統治を恐れる人々は国境への移動を急いでいる。
カブール空港の運営が停止される中、退避を望むアフガン人の支援はイラン、パキスタンおよび中央アジアへの安全な出国に焦点が置かれている。
パキスタンの国境当局者は、アフガン側で多数の人が検問所が開くのを待っていると話した。
アフガン北部とウズベキスタンの国境は閉鎖が続いている。
アフガン人最大50万人が国を逃れる可能性があるとみられる中、英国とインドはそれぞれドーハでタリバン関係者と会談した。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は1日、現時点でアフガン人の多くは国内にとどまり、隣国に逃れた人は少数だと指摘した。また、人道上の非常事態に3億ドルの国際支援が必要だとした。