タリバン「戦争終結」宣言、アフガン大統領出国 欧米は退避加速
[カブール 16日 ロイター] – アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンは首都カブールの大統領府を掌握し、戦争の終結を宣言した。欧米諸国は16日、外交官など自国民を退避させる動きを加速した。
タリバンの指導者は16日、外国勢力が退去した後で、新たな統治構造を編み出すと発言。タリバンの戦闘員に対しては、民間人に恐怖を与えないようにし、通常活動の再開を許可するよう指示していると述べた。匿名を条件にロイターに明らかにした。この指導者は「これまでよりもはるかに良い状態で日常生活を続けられる。私が当面言えるのはそれだけだ」と述べた。
アフガンのガニ大統領はタリバンがカブールに進攻する中、流血を避けたいとして15日に出国。カブールの空港には国外への脱出を図る多数のアフガン人が集まった。
タリバン政治局のナイーム広報官はアルジャジーラTVに対し、「きょうはアフガン国民とムジャヒディン(イスラム聖戦士)にとって偉大な日だ。彼らは20年間の努力と犠牲の成果を目にしている」と指摘。「神のおかげでアフガンでの戦争は終わった」と述べた。
アルジャジーラは、大統領府に入ったタリバンの司令官と武装した兵士とする映像を流した。
広報官は、アフガン新体制の形態は間もなく明らかになると説明。タリバンは孤立を望んでいないとして、平和的な国際関係を求めていると付け加えた。
「われわれは求めていたものに達した。それはわが国の自由であり、国民の独立だ」と指摘。「われわれは、誰であれわれわれの領土を利用して誰かを標的にすることを容認しないし、他者を傷つけたいとは思っていない」と述べた。
米国務省報道官は16日、ウィルソン大使を含む大使館職員全員がカブール空港に移動し、退避するのを待っていると説明。大使館の敷地からは米国旗が降ろされ、撤去されたという。
米国や英国、ドイツ、日本など60カ国以上が、アフガニスタンからの退避を望んでいる同国国民や外国人の出国を認め、空港や国境を引き続き開放すべきだとの共同声明を発表した。
ガニ大統領はフェイスブックに投稿し、カブール市民を危険にさらすタリバンとの衝突を避けるために出国したと説明した。居場所は明らかにしなかった。
カブールにいる一部のソーシャルメディアユーザーは混乱の中で出国したガニ氏を臆病者だと指摘した。
米国内では、アフガンの混乱は米国のリーダーシップの欠如がもたらしたとして、バイデン大統領によるアフガン撤退方針を批判する声が出ている。
米国は大使館の外交官をヘリコプターで空港まで退避させた。米国などが訓練などを提供してきたアフガン政府軍は事実上瓦解した。
<イスラム法>
アフガン人の多くは、1996─2001年のタリバン政権時代のシャリーア(イスラム法)を厳格に適用した恐怖政治が再び敷かれることを恐れている。タリバンは一方、女性の権利を尊重し、外国人とアフガン人の両方を守ると約束するなど、これまでより穏健な姿勢を強調している。
ナイーム広報官は「アフガンのあらゆる人々と対話する用意があり、彼らに必要な保護を約束する」と述べた。
国連のグテレス事務総長はタリバンやそのほかの当事国に対し、最大の自制を求め、アフガンの女性や女児の将来に特に懸念を表明した。
米国防総省は、アフガニスタンにいる米国民らの退避を支援する米兵1000人の追加派遣を承認した。
同省の高官はワシントンでロイターに、米国人を中心に約500人がこれまで国外に脱出しており、予定されている米軍兵士がカブールに配置されれば、1日5000人の退避が可能になると述べた。
フランス、ドイツ、オランダなど欧州各国も自国民や自国機関で働いたアフガン人の国外退去に取り組んでいると表明した。
ロシアは在アフガン大使館の職員を退避する必要性は生じていないとし、トルコは在アフガン大使館の業務を継続するとした。
<米国の撤退>
ブリンケン米国務長官はABCニュースに対し、職員をヘリコプターで運ぶ映像は1975年のベトナムからの米国の撤退を思い起こさせないかとの質問に「1歩下がってみよう。これは明らかに(南ベトナムの首都だった)サイゴンではない」と述べた。
バイデン米大統領は、8月31日までにアフガンからの駐留米軍撤退を完了させる計画に固執していたことを巡り、国内での批判の高まりに直面している。
共和党のマコネル上院院内総務は15日、「米国のリーダーシップの恥ずべき失敗」だとしてバイデン大統領を非難。「テロリストと中国のような主要競合相手は、身を潜めた超大国の醜態を見ている」と強調した。
ナイーム広報官は、タリバンは他国の問題に干渉しない代わりに、外国からの内政干渉も許さないと表明。「外国勢力がアフガニスタンでの失敗を再び繰り返すとは思わない」と語った。