中国の有人宇宙船「神舟12号」を搭載した「長征2号F遥12」キャリアロケットが17日、酒泉衛星発射センターから打ち上げられた(Kevin Frayer/Getty Images)

進む中国の宇宙開発 宇宙戦争における米国の優位性を脅かす=専門家

中国が独自に建設中の宇宙ステーションに飛行士3人を送り込んだことを受けて、宇宙・安全保障の専門家は、米国の政策立案者がより優れた宇宙戦略を打ち出す必要があると警告した。

『Winning Space: How America Remains a Superpower 』の著者であるブランドン・ワイチャート氏は6月19日、衛星放送NTDのインタビューで、「(中国共産党政権は)米国との宇宙戦争に勝つために、まず真珠湾攻撃のような形で、我々の衛星を破壊したり、停止させたりするだろう」と述べた。さらに、地政学的リスクが高まるなか、米国は、中国やロシアからの攻撃を阻止する準備ができていないと警鐘を鳴らした。

中国の有人宇宙計画を管轄している中国有人宇宙プロジェクト弁公室(CMSEO)は、NASAのような民間機関ではない。CMSEOは、中国軍を統括する中国共産党の機関である中央軍事委員会の下部組織だ。

現在、郝淳氏がCMSEOのトップと務めているが、中国の有人宇宙計画は、中央軍事委員会の部長でもある李尚福氏が指揮している。

また今回搭乗した3人の宇宙飛行士、聶海勝氏、劉伯明氏、湯洪波氏が中国軍の元空軍パイロットであることから、中国の有人宇宙開発が人民解放軍と強い関係を有していることを示している。

飛行士3人は、宇宙ステーションの中核施設に約3カ月滞在する。これは、2003年に中国が宇宙飛行士を地球周回軌道に打ち上げて以来、中国史上で最も長い有人宇宙ミッションとなる。中国の宇宙ステーション「天宮」は、2022年に追加モジュールが導入される予定。

1998年に打ち上げられた国際宇宙ステーション(ISS)は、米国、カナダ、日本、ロシア、欧州宇宙機関の加盟国が協力して運営している。中国は、2011年に米国が国家安全保障上の理由から、NASAと中国組織との宇宙協力を禁止する法律を成立させて以来、ISSへの参加が禁じられている。

また、中国の不信感を抱かせる動きも、ISSへの参加拒否につながった。2007年1月には、自国の老朽化した気象衛星に対しミサイル爆破を試みたことで、国際世論のひんしゅくを買った。

前出のワイチャート氏は、米国の衛星を破壊する可能性のある中国の宇宙技術を2つ挙げている。一つ目は、中国の宇宙ステーションに取り付けられた、巨大ロボットアームだ。中国国営メディアによるとこの巨大ロボットアームは長さ10メートルで、20トンもの重量物を持ち上げることができ、深刻な脅威となる。

「平時には、中国はそのロボットアームを使い、宇宙船をドッキングするだろう。しかし、戦争になれば、我々の衛星を近くの軌道から引き抜き、軌道から押し出したり、破壊工作をするために使われるかもしれない」とワイチャート氏は言う。

米宇宙軍司令官のジェームズ・ディキンソン陸軍大将は4月、上院の公聴会で、中国の宇宙ロボットアーム技術は「将来的に他の衛星を引っ掛けるために使われる可能性がある」と語った。

米国の衛星を脅かすもう一つの技術は、レーザーだ。

「中国の計画者は、宇宙ステーションが軌道上に完成したら、大きなレーザーを設置すると話している。平時にはそのレーザーは、軌道上の宇宙ごみを除去するために使用されるだろう。しかし、戦争になれば、そのレーザーはアメリカの衛星を無効化するために使われる可能性がある」とワイチャート氏は指摘する。

2018年には、中国の空軍工学大学の研究者が、宇宙のゴミや古い衛星を除去するのに、巨大なレーザーがどのように有効であるかを提案する論文を発表している。

衛星通信は、米国の戦力を効果的に展開するためだけでなく、米国経済にとっても不可欠だ。ETF(上場投資信託)などの電子取引のほとんどが衛星に依存していることを考えると、衛星がなければ米国経済は「1970年代以前の時代」に逆戻りしてしまうだろう、とワイチャートは述べた。

さらに重要なのは、中国が米国を抜いて、宇宙領域における優位性を獲得しつつあることだとし、「中国はまだ米国より遅れている。しかし、18年や20年遅れているのではなく、6〜7年しか遅れをとっていない」と付け加えた。

また、米国の政策立案者は、宇宙政策に関して「あまりにも小心者」だとワイチャート氏は指摘し、米国の衛星を守るだけでなく、将来の米国の商業的利益を守るための「システムと原則を発展させる」必要があると述べた。

(Frank Fang/翻訳・蓮夏)

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