ロイド・オースティン米国防長官(Photo by Chip Somodevilla/Getty Images)

米国防長官「米国には世界中に同盟国がいるが、中国にはない」

ロイド・オースティン米国防長官は5月27日(現地時間)、米下院・軍事委員会の公聴会に出席し、米国が直面している軍拡を続ける中国の影響力の拡大に警戒感を示した。いっぽう、米国は同盟国などとの関係を重視して「米国には同盟国が世界中にいるが中国にはない」と述べ、孤立化した中国にはない同盟国との結束という強みを強調した。

オースティン氏は、2022年度国防総省予算要求に関する同公聴会に提出した書面資料から、米国が直面する世界的脅威を列挙した。中国は、経済的な影響力を拡大するのみならず、「民主的価値と人権を軽視し、自由で開かれたインド太平洋に挑戦している」と述べ、国際秩序と普遍的価値観の破壊につながっているとの懸念を示した。

オースティン氏は、バイデン米大統領が暫定的な国家安保戦略指針の中で、中国を「唯一のグローバル競争者」と規定したことを取り上げた。また、米国のインド太平洋における利益の保護、中国軍の急速な現代化への対応の必要性を強調した。


同席したミリー米軍統合参謀本部議長も、中国を米国における「最大の安全保障上の課題」と捉えていることを明らかにした。ミリー氏もまた、中国は米国の「戦略的競争者」とし、「歴史は決定論的なものではなく、中国との戦争に必然性はない」と述べながら、単なる衝突ではなく、競争の関係を維持すべきだと指摘した。

中国、農民の歩兵からハイテク軍事大国に=ミリー議長

ミリー氏は、中国は先端技術に多額の投資を行っているが、軍事的には米国とは「ライバルでもない」レベルだが、中国の目標が今後数十年の間にすべての領域で「米国と対等になること」を示していると述べた。

ミリー氏は、中国は40年の間に「農民を中心とした歩兵」から、5G通信、極超音速、量子コンピューティングなどのハイテクを駆使して軍を近代化する軍事大国へと目覚ましい発展を遂げたと述べた。

中国の同盟国に対する自治権の脅威について、ミリー氏は「中国は太平洋の平和的な現状の維持に挑戦している。今世紀半ばまで国際秩序を再び変更するという意図がある」と述べ、日本を含む同盟国やパートナー国の自治権を脅かす行為について「地域の平和と安定を揺るがすもの」と批判した。


オースティン氏は同日、北朝鮮の核・ミサイル開発についても言及し、「インド太平洋地域の同盟国及び米国本土を打撃できる」能力があるとして懸念を示した。また「米国は外交で主導しながら、北朝鮮の不安定で挑発的行動を緩和し、朝鮮半島の平和と安定を維持するために引き続き努力する」と述べ、外交による緊張緩和の展開を示唆した。


(編集・潤水)

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