旧正月の連休を控え、中国上海市の虹橋駅の待合室に集まる乗客たち=2018年2月6日(Johannes Eisele/AFP via Getty Images)

中国、人口調査データに改ざん疑惑 「12億6千万人」との計算も 専門家「史上最悪」と批判

10年に一度実施される中国国勢調査の結果を、1カ月遅れの5月11日にようやく発表した。このデータによると、中国の人口は14億人を超え、低成長を続けている。しかし、矛盾や不整合が多く見つかり、「史上最悪」の国勢調査データと批判されている。一部の専門家は独自の方法で総人口が12億6千万人と算出し、政府発表と大きな乖離があった。データ改ざんの理由について、市場の大きさを謳い、外国資本の流出を防ぐ狙いだとの指摘が出ている。

今回は共産党政権発足後の第7回人口センサス(国勢調査)。それによると、第6回国勢調査(2010年)と比較すると、人口は7206万人(5.38%)増加して14億1178万人となり、年平均成長率は前回の0.57%から0.04ポイント減で0.53%となった。

人口の平均年齢は38.8歳。男女別人口をみると、男性が51.24%、女性が48.76%で、男性が女性より3500万人多い。

また、14歳以下の人口は1.35%増加、60歳以上の人口も5.44%増加した。労働力人口(15〜59歳)は総人口の約63%を占め、前回より6.79%減少した。

1.欠陥だらけのデータ 専門家も市民も不信感

5月11日付の米政府系ラジオ・フリー・アジア(RFA)は、瀋陽在住のオンライン作家、劉東氏の分析を引用し、「当局が十分な議論を経て、これらの数字を導き出した可能性が高い」と伝えた。「各都市の出生数は大幅に減少し、住民の出産意欲も低下しているのに、なぜ総人口が増えているのか疑問視せざるを得ない」という。

清華大学社会学部の郭玉華教授は、当局が発表したデータが信頼されていないことについて、RFAの取材に「人口統計データだけでなく、あらゆる問題で社会の信頼が損なわれているのは事実だ。だから、国民を納得させるのは難しい」と答えた。

米クレムソン大学(Clemson University)の経済学准教授である徐家健氏は、香港紙・蘋果日報(アップル・デイリー)に対し、「なぜ中国政府がこのような欠点だらけのデータを発表したのか理解できない。今回の統計に問題があること、あるいは過去の統計に問題があることを間接的に認めている」と述べた。

インドのMICAビジネススクールの学長であるシャイレンドラ・ラージ・メタ(Shailendra Raj Mehta)氏は昨年9月、中国共産党が労働力人口の減少、出生率の低下、男女比の不均衡などの人口統計データを隠そうとしているにもかかわらず、中国の人口問題は10年以内に表面化すると警告した。

また、市民からも国勢調査データの信憑性に疑問の声が上がっている。インターネット上では、「みんながどれくらい人口が減るかを予想していた」「13億を切るのではないかと思っていた」「体裁見栄えは良くても吟味に耐えられない」「これだけ人口が増えたのだから、結婚や出産を急がせないで」「独身男性が多いので、データ上の男女比が現実離れしてる」などのコメントが寄せられている。

2.「実際の人口は12億8千万人超えず」

ウィスコンシン大学研究員の人口問題研究家である易富賢氏は、アップル・ディーリー紙の電話インタビューで、今回の国勢調査データを「中国史上最悪」「大幅な水増し」と批判した。

易氏は昨年11月、「2020年国勢調査シミュレーション分析」という論文の中で、医療、教育、結婚など社会指標をもとに中国の出生率と出生人口を再算出した。2020年の実際の人口は12億6千万人にとどまり、12億8千万人を超えることはないと結論づけ、中国は未曾有の高齢化危機に直面していると述べた。

同氏はRFAの取材に対し、最も明白な問題は、出生数が以前の公式発表と矛盾していることだと語った。統計局は小学校の就学率をもとに出生数を算出し、1996~2020年までの出生数を2億3800万人と発表したが、今回の調査データでは2億5300万人となっており、1500万人も膨れ上がっているという。

統計局が発表したデータによると、2006~20年までの総出生数は2億4千万人を超え、今回の調査データの累計数とまったく同じであり、14歳未満の死亡率が過去14年間ゼロであることを示している。このようなデータは常識では考えられないという。

また、2020年には、65歳以上の高齢者(1955年生まれ)が出生数の1961万人に対して、1641万人増となり、前年比60%以上の伸び率が不自然だと指摘された。1954年の出生数は2232万人と1955年の出生数を上回っているにもかかわらず、2019年に65歳になった人口は945万人で過去11年間の最高を記録した。

浙江省の不動産専門家である丁建剛氏は、国勢調査データによると、2020年の出生数1200万人は、前年比1173万人の増加分を差し引き、2020年の死亡数は27万人にとどまると微信(WeChat)に投稿した。しかし、過去には毎年の死亡者数は1000万人前後であり、数字は明らかに間違っているという。

3.少数民族の人口データに対する疑問

データの結果によると、過去10年間で漢民族の人口は4.93%増加し、各少数民族の人口は10.26%増加した。しかし、中国政府が発表した公式統計によると、新疆ウイグル自治区のウイグル人の人口は2017年から急激な減少が見られ、出生率は2017~19年にかけて15.88%から8.14%に低下している。

これに対し、ドイツに拠点を置く亡命ウイグル人組織「世界ウイグル会議」のスポークスマン、ディリシャト・レシテ氏はRFAに対し、「中国共産党が少数民族の人口増加率が漢族より高いという主張で、強制不妊手術や中絶など、ウイグル族を絶滅する組織的な試みを隠蔽している」と指摘した。

カザフスタンの人権団体「アタジュルト(Atajurt)」の創設者であるサリクジャン・ビラシ(Serikzhan Bilash)氏は、この数字は根拠がなく、捏造されたものだとし、中国共産党は近年、新疆で多くの漢民族をウイグル族に登録させ、民族浄化によって生じた人口のギャップを埋めようとしていると明かした。

同氏によると、中国共産党は新疆で厳しい計画生育政策を実施しており、2017年以降、カザフ人とウイグル人の出生率はほぼゼロになっている。多くの母子保健センターが強制収容所と化していることが、この事実を物語っているという。

4.人口データ改ざんの理由

米国在住の金融専門家の王剣氏は、自身のYouTubeチャンネルで、「多くの欧米人は、中国共産党の偽りの人口データや消費水準に騙されている」と語った。

同氏によると、中国共産党は中国の人口を14億人と主張しているが、実際には中間層以上の人口は4億人しかいない。今回の国勢調査は、中国の高齢化問題によってもたらされた社会保障基金の深刻な赤字と、低所得層の貧困化を示している。欧米の投資家は、中国の市場は実際にはそれほど大きくないということを明確にしておく必要がある。

時事評論家の石山氏は、自身の解説番組「石山角度」で、人口データを改ざんする主な理由は「世界の人口トップの座を争うため」だと語った。インドが世界で最も人口の多い国になれば、国際資本が若者人口の多いインドに流れ、中国は「世界の工場」としての地位をより早く失うことになるという。

また、発表を1カ月延期した理由について、石氏は、人口データの改ざんは人数、年齢、性別、地域分布などの過去のデータと照合する必要があり、かなり大掛かりなプロジェクトであると述べた。これまでの報道で明るみに出た欠陥データは、氷山の一角に過ぎず、スーパーコンピュータで解析すれば、さらに多くの問題が出てくると示唆した。

一方、中国国家統計局は17日、「抽出調査は誤差があった」という理由で、抽出調査だった2011~19年のデータを修正すると発表した。出生数は年平均で100万人ほど増えることを明らかにした。

(翻訳編集・王君宜)

関連記事
湖南省株洲市の湘江で、ウイルスサンプル収集用試験管が大量に発見され、住民たちは感染リスクに怯えています。当局は「未使用で損傷はなく、ウイルスは検出されなかった」と発表しましたが、専門家や市民の間で疑問の声が広がっています。試験管の正体や流出の経緯について調査が進む中、不安は収まりません。病院も研究所を信用できないのは間違いない。中国ではコロナが収束していないというのは、こういうことなのか?
米司法省は最近、IR事業をめぐり日本の政府関係者に賄賂を渡すよう指示して、中国企業のCEOを海外腐敗行為防止法違反の容疑で起訴した。
ニセモノ摘発も命がけ、道徳低下した中国社会。中国福建省の展示会で、偽商品の摘発を目的とするインフルエンサーが暴行を受ける事件が発生しました。「福建鉄鉄」のカメラマンが問題商品を通報したことがきっかけで、出品者らから集団暴行を受けたとされています。この事件は、中国SNSやメディアで大きな注目を集めており、現在、市場管理局と公安当局が調査を進めています。偽商品撲滅の活動が招いた事件の経緯とその背景に迫ります。
19日、中国江蘇省連雲港市にある国有企業「中国化学工程第十四建设有限公司」の正門前で、ある女性が滞納された給料の支払いを求めて会社管理者の足に抱きつき泣き叫ぶ姿が撮影されました。この動画はSNSを通じて拡散され、多くの人々に衝撃を与えています。女性の訴えに耳を貸さない企業の対応と、中国社会で頻発する同様の問題に、ネット上では悲しみと怒りの声が相次いでいます。「惨め過ぎる」労働者の姿。官製メディアが宣伝する「盛世(繁栄)」中国のリアル。経営者が人間なのか? 人間であれば、会社をつぶす決意をして、会社財産を売って、給料を支払うはずだが。
湖北省武漢市で、配達食注文に対するクレームが原因で、配達員がナイフを持って客の家に押し入ろうとする衝撃的な事件が発生した。監視カメラには、ドアを内側から押さえる家主と、外でナイフを振り上げながら脅す配達員の姿が記録されている。この事件をめぐり、SNSでは中国社会のストレスや労働環境への懸念が噴出。「極限状態にある人々の行動は予測不能」といった声も広がっている。 至るところに「火薬庫」の中国、言動を慎まないと、いつどこで殺されるかわからない。