≪医山夜話≫ (58)

患者からもらった玉子

私の小さい時の話です。ある日、母と買い物をするために街に行きました。そこで、変な歩き方をしている王さんを見かけたので、母は持っていた買い物かごを私に持たせ、「王さん、どうしたのですか。どこか痛いのですか?」と聞きました。王さんは頭を上げて、目の前いる母に気づくと、まるで救いの神が見えたかのように、「先生、この数日は湿気で寒く、体が冷え込んでしまいました。そこにまた豆炭をリヤカーで運ぶ時、いつもより数回多く引いたので、腰をねじって立ち上がれなくなってしまいました。私は医療保険を持ってないし、また旧正月が迫ってきて、病院に行くお金もなくて…」。彼が懐の中から布を取り出すと、中にはほんの僅かなお金が入っていました。王さんは母を見て、ため息をつきながら頭を振りました。

 母は、直ちに王さんを家へ連れてくると、鍼を刺し入れて吸い玉をかけました。しばらくすると、腰を屈めて家に入った王さんの腰はまっすぐになり、王さんは母に感謝の言葉を連発しました。

 数日後、王さんは玉子がいっぱい入った籠を提げて家に来ました。田舎の親戚が持ってきたお土産で、母が治療してくれたことに感謝するためと言って、母に受け取ってほしいと懇願しました。しかし、母が断るので、彼と母は再三に譲り合いました。受け取らないと王さんが怒りそうになるのを見て、母は仕方なく玉子を受け取り、代わりに旧正月のために作った塩漬けの魚を一本、王さんに持って帰ってもらいました。

▶ 続きを読む
関連記事
ケールの栄養、効能、食べ方、保存法までまとめた完全ガイド。苦みを抑え、吸収を高める調理のコツも紹介します
寝返りを打っただけで、突然ぐるぐるめまいがすることがあります。原因は、耳の中の小さな「石」かもしれません。
肉や卵だけを食べるカーニボア食は、危険な流行か、治療の道具か。腸、栄養、心臓への影響を科学的に考えます
1200年の歴史を誇る京都の「西陣織」をはじめ、存亡の危機に瀕する日本の伝統工芸の過酷な現実と課題を浮き彫りにした一編。市場原理と文化継承の葛藤を描きつつ、手仕事の価値を後世へ残すための責任と希望を問いかける
今日、歯が痛くても抗生物質があり、暑くてもエアコンがある。当たり前すぎて気づかない現代の恩恵を、先祖の目線から見つめ直してみると、日常への感謝が自然と湧いてきます