(oceanaris/Creative commons)
≪医山夜話≫ (60)

まぐれ当たりの治療法

私の小さかった頃、中国はちょうど「読書は無用」のご時世だったので、時間を持て余すことが多々ありました。私はよく母が勤めている診療所に行き、漢方薬の薬の香りを嗅いだり、時には細々とお手伝いなどもしていました。そこにいた医者たちは、よく麦門冬、ナツメ、甘草などの薬草を、おやつとして私にくれました。それらはほんの少し甘味があり、子どもの私にとってひとつの楽しみでした。

 その頃、医師同士の会話を耳にする機会も多くありました。「あの患者の下痢は、いろいろ処方を試してみたが症状が良くなったり、悪くなったりで、治りませんでした。ある日、思い切って彼の薬の中に大黄を加えてみたら、一度だけ猛烈な下痢をしただけで、その後二度と再発していません……」。こんな「まぐれ当たりの治療法」の会話を多く聞きましたが、患者を治療する際に一つの方法にこだわるべきではないことを、子供ながらに知りました。それは、後に私が医者となって患者を治療する上で、ひとつの教訓となりました。

 祖母から聞いた同じような話

▶ 続きを読む
関連記事
認知症は早めのケアで進行をゆるやかにできる可能性があります。中医学の視点から、日常に取り入れやすい養生スープと頭・耳のセルフマッサージを紹介。食事と習慣で脳を守る具体策が分かります。
がん治療に新たな可能性――改造した細菌が腫瘍の内部で増殖し、がんを内側から分解するという研究が進んでいます。無酸素環境を利用した革新的な治療法とは何か。最先端の合成生物学が切り開く新しいがん治療の可能性を紹介します。
歯磨きやフロスを欠かさないのに虫歯や歯周病が気になる――そんな人は少なくありません。実は口内環境のバランスが鍵になることも。注目されるキシリトールの働きと、口腔健康を守る新しい視点を専門家の研究とともに解説します。
健康のために飲んでいる薬やサプリ、実は普段の食べ物がその効果を弱めたり強めたりしているかもしれません。グレープフルーツや緑茶、イチョウ葉など、身近な食品と薬の意外な相互作用を専門家の解説でわかりやすく紹介します。
春は牡蠣が最も肥える季節ですが、食べ方によっては体に重さや冷えを感じることもあります。にらやしょうがなどと組み合わせることで、春の気の巡りを整え、体にやさしい一皿になります。