≪医山夜話≫(41)

漢方も急病を治療できる  

私の鍼灸医術は先祖から代々伝わってきたもので、私はこれを大切にし、謹んで医療行為を行なっています。

 私の診療所には三つの診察室があり、大半の時間は何事もなく平穏に過ごしています。出入りする患者にはさまざまな症状を訴え、さまざまな人種、さまざまな年齢の方がいます。しかし、時には「非常事態」が発生して、医者を困らせる重症患者が来ることもあります。

 「このような患者をどうして救急に搬送しないのか? 漢方医に舌と脈を診てもらうのは、時間の無駄ではないか?」と、読者は心配するかもしれません。急性疾患を治療するのは西洋医学で、漢方医学では慢性病しか治療できず、急性の患者には対応できないと考える人が多いでしょう。実は、緊急手術を要する場合を除き、漢方医学でもかなりの急性疾患に対応することができます。例えば、私の診療所に来られる患者の中には、狭心症の発作、吐血、熱中症、一時失神、喘息の急性発作を起こして来られる方もいます。鍼灸治療を施すと、いずれも病状が改善しました。

 古代より、医学の先人たちは鍼灸で急性疾患を治療してきました。『史記・扁鵲倉公列伝』には、扁鵲が鍼灸で死にかけたクオ国の太子を治療し、見事に回復させたことが記載されています。東晋時代の葛洪は『肘後備急方』に、失神、コレラなどの急性疾患を鍼灸で治癒したことを記録しています。隋代の巣元方が記した『諸病源候論』には、鍼灸で脳卒中や各種の心臓疾患を治療することにも言及しています。唐代の孫思邈は『備急千金薬方』に、鍼灸で脳卒中、急性の嘔吐や下痢、排尿障害、子宮の大出血、吐血、急性腰痛、蛇や犬に噛まれた患者、てんかんなどの急性疾患の治療法を詳しく記録しています。

 先日、高熱が出るたびに失神する持病の患者が私の診療所に運ばれました。彼は多くの薬にアレルギー反応があり、西洋医学は彼に対して手の施しようがありません。運ばれてきた時、熱は一向に下がらず、呼吸困難の症状も出ていました。私は彼の耳たぶに鍼を刺し、5~7滴の血を出すと、5分も立たないうちに熱は下がりました。あまりにも早い治療効果に、彼の家族は感心していました。

 なぜ耳たぶから数滴の血を出すと、解熱効果が現れるのでしょうか? 耳たぶから血を出すと、まるで一つの窓を開けたかのように、新鮮な空気が取り入れられて、体内の有毒な邪気が排出されるからです。耳は臓腑と深く関係しているのです。

 

(翻訳編集・陳櫻華)

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