(Photo credit should read CHRISTOPHE SIMON/AFP via Getty Images)

自然農法と自給自足 いまそこにある危機と個人が選ぶ解決策 

コロナパンデミックが起こり、すでに一年が経過してしまった。テレビや新聞といった従来のマスメディアや、Facebook、YouTube、Twitter といった SNS で得られる情報からは、明るい未来がまったく見えてこない。このまま人類社会は崩壊していくのだろうか?  多くの人が不安な生活を続けているのではないか。感染症を怖がる人。感染症は怖くないけれど、失業が怖い人。感染症も失業も怖くないけれど、食料危機が怖い人。そのどれも怖くないけれど、大地震などの自然災害が怖い人。たくさんの不安材料が目の前に転がっている。ほかに明るい材料はないのかと探しても、そう都合の良い情報はなかなか見つからない。

そんななか、自給自足に関心を寄せる人が増えている。もともと、コロナの感染拡大を防ぐという目的でテレワークが増えたことも背景にあるらしく、たとえば、通販サイトの販売実績によると、プランターや土などガーデニング関係の商品の売り上げは、2020 年の 8 月までの平均で昨年比 159%になっていたという。(EC Data Lab https://ecdatalab.nint.jp/2020/08/19/gardening/ より)

とはいえ、159%では、自給自足そのものが高い関心を示しているとは言いがたく、外出できない人たちの関心が、ガーデニングだけでなく、インドアのいろいろな趣味に向かっていたということだろう。

しかし、自然農法の研究をしている私の農園には、明らかに昨年までとは異なる波が押し寄せているのは間違いない。 農作物を作るのに肥料や農薬などの資材を一切使わないという自然農法(Halu 農法)を研究しているが、2020 年 2 月から「Halu 農園オーナーズクラブ」という自給自足を目指す体験実習事業を開始したところ、募集枠 10 人で、スタート時は 7 人だったが、5 月までに 13 人に増えた。参加者ごとに家族や友人を加えると、約 40 人が自然農法を学んだ。

Halu農園オーナーズクラブの参加者が育てたスイカを収穫 2020年9月

ガーデニングは初めてという人でも作物を育てることができる技術なので、参加者は大玉スイカを大量に作ったり、各自が好きな野菜を育てることができたりして、将来への不安を解消するどころか、大きな希望を持てたようだった。こうした情報が口コミで広がり、2021年は募集枠 20 人に対し、前年の継続者を含めてすぐに希望者は 20 人を超え、2 月には 23 人でスタートしているが、参加希望者が後を絶たない。

世界経済フォーラムの今年のテーマは「資本主義のグレート・リセット」だそうだが、視点の高い市民は、いまそこにある危機が単なる経済体制の問題だけではないことに気付いている。感染症におびえる不健康な状態をどう解消するかだけではなく、気候変動による食料危機、そして自然災害が発生したときに生き残るための準備など、自分と家族を守るための道を探しているのだ。そしてその解決策を、自然農法による自給自足に見出している。

いま、科学の進歩によって農業技術は革新的に高まっており、肥料も農薬も使わず、だれにでも自分の食べ物を自分で確保できる時代になりつつある。足元からの人類の大変革は、ここから始まっているのかもしれない。

【寄稿者:自然農法家、ジャーナリスト  横内 猛】

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