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【漢詩の楽しみ】早春呈水部張十八員外(早春、水部張十八員外に呈す)

 天街小雨潤如酥、草色遥看近却無、最是一年春好處、絶勝煙柳満皇都。

 莫道官忙身老大、即無年少逐春心、憑君先到江頭看、柳色如今深未深。(二首連作)

 天街小雨(てんがいしょうう)潤(うる)おうて酥(そ)の如し。草色遥(はる)かに看れども近づけば却(かえ)って無し。最も是れ一年春の好(よ)き処(ところ)。絶(ぜつ)に煙柳(えんりゅう)の皇都(こうと)に満つるに勝(まさ)れり。

 道(い)う莫(な)かれ官忙しく身は老大、即ち年少春を逐(お)う心無し、君に憑(よ)って先(ま)ず江頭(こうとう)に到りて看(み)ん、柳色(りゅうしょく)如今(じょこん)深(ふか)きや未(いま)だ深からずや。

 詩に云う。長安の都大路は春の小雨に潤い、油脂のように艶やかに光っている。遠くに見える若草も、近づいてみると、まだほとんど芽を出していない。一年のなかで最もすばらしいのは早春のこの時期であろう。柳の緑が皇都に煙る初夏も捨てがたいが、春の今はそれに勝るのだ。(第二首)我が弟子、張籍よ。この私が、官職が忙しいだの、歳をとっただの、若い頃とは違って春を追い回す気が失せたのだろう、などと申してくれるな。それよりも、君はまず川辺に行って、初夏の柳の緑色が濃くなったかどうか見てきてくれないか。緑濃ければ、老いた私も出かけてゆくぞ。

 韓愈(かんゆ768~824)の作。根っからの儒教の徒で、しかも気骨ある人物だった。唐という時代は、名君である太宗の御世を最盛期として、中国文化が大輪の花を咲かせた輝かしい時代であることは間違いない。ただ、歴代の皇帝はその資質に個人差があり、あるときは道教に耽溺し、あるときは仏教の救いにすがりつこうとした。

 韓愈の時代、皇帝は第14代憲宗である。政治上の業績ものこしたが、皇太子が19歳で病没すると、憲宗は悲しみのあまり道教や仏教に浸りきってしまう。韓愈は「仏舎利を論ずる表」を献じて直言し、その迷いを諫めるが、かえって憲宗の怒りを買い、一時期広東へ左遷されてしまう(819)。その翌年、丹薬の毒で精神に異常をきたした憲宗は、宦官の陰謀により暗殺される。

 表題の詩は韓愈の最晩年の作である。結果として、死の前年の早春と初夏をうたったものになった。長安の好季節の風景が、このときの韓愈の目にどう映ったか興味深い。

 詩中にでてくる張籍は、韓愈の門人であり弟子であるが、韓愈とは同年齢である。そこが長年の友に語りかけているようで、なんとも微笑ましいものがある。

 (聡)

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