【紀元曙光】2020年8月9日

(前稿より続く)「生に執着せず、死と親しむ」とは難しい注文であるが、確かに武士道の一面であるようだ。

▼禅宗の起源は中国だが、伝えられた日本で開花したといってよい。もっとも、禅宗の修行を積んで悟りを得られるかというと、これが至難のことで、司馬遼太郎さんも「10万人に一人ぐらいしか悟りを得られない」とどこかに書いていた。それほど禅宗というのは労多くして益少なしの宗旨らしい。

▼ただ、日本の武士には、精神修養としての禅が広く受け入れられた。もう一点、我が国で特筆すべきは、日本美術の世界で「禅の思想」が大輪の花を咲かせたことである。質素な茶室にも、虚飾を排した禅的な空間美があるといってよい。

▼そうした価値観は、中国人には理解しがたいだろうが、日本の武士の感性には非常に合致していた。同じく新渡戸が述べていることだが、神道の教義も武士道に付与しているという。神社の奥殿に掲げられている一枚の鏡について、新渡戸はこう記す。

▼「なぜ鏡だけなのか。これについては簡単に説明がつく。すなわち鏡は人間の心を表している。心が完全に平静で澄んでいれば、そこに神の姿を見ることができる。それゆえに人は社殿の前に立って参拝するとき、おのれ自身の姿を鏡の中に見るのである」。

▼いつしか日本人は、寺や神社に賽銭を投げ入れ、それを担保に欲深い願い事ばかりをするような民族になってしまったが、それは嘆かわしくはないか。せめて神仏を前に自身の努力を誓うほうが態度としては真面目で良いが、結果にこだわりすぎても執着になろう。その匙加減が、実に難しい。(次稿へ続く)

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