韓国サムスン、中国のコンピュータ事業から撤退 800人解雇
韓国のサムスン電子は8月1日、中国・蘇州市にあるサムスン電子コンピューター工場を閉鎖すると正式に発表し、補償案を発表した。同社のコンピューター事業と携帯電話事業はすでに中国から撤退しており、サムスンの唯一の液晶工場は今年中にベトナムに移転する。
サムスン蘇州は7月30日、研究開発を除く全部門800人を解雇し、8月末にノートパソコンの生産ラインを閉鎖すると社内通知した。
ラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に応じた山東大学の金融学者・司令氏は、サムスンは2年前から中国撤退のペースを加速させていると語った。サムスンは、米中貿易戦争の風向きを見ていたという。「中国は人件費の安さという利点をすでに失っている。海外企業はバランスシートの負債が大幅に増加し、企業の生き残りは困難になっている」
同社の蘇州コンピューター工場閉鎖の公式説明は、「状況や市場の変化により、コンピューター部門の事業転換を図るため、開発戦略を調整した」としている。
この点について、IT業界に詳しい高強氏は、RFAとのインタビューで、サムスンの蘇州コンピューター工場を閉鎖する理由は「中国市場のコンピューターは、携帯電話などよりも非常に高い中国企業の占有率」だと指摘する。「米国、日本、英国、フランスの企業も撤退し、韓国企業もこれに追随した。改革開放から40年。中国は経済封鎖している」と述べた。
2002年に設立された蘇州サムスン電子コンピューター有限公司は、サムスン電子の世界で唯一のノートパソコン製造拠点だった。米国やアジア、中国向けに販売するパソコンを生産していた。
司令氏によると、多くの外資系企業は新たな米中冷戦による影響は避けられないとみている。「サムスンは、米中分断の可能性があると見ているのだろう。サムスンを含む多くの多国籍企業は、中国からの撤退が最善の選択肢だと感じている」
韓国企業はかつて、中国と最も密接な関係にあったが、中国での事業は現地の政治環境の影響で損失を被ることが多かった。例えば2017年、ロッテグループの中国事業は、韓国での米軍による高高度ミサイル防衛システム(THAAD)の展開により、中国当局により閉鎖を命じられた。2018年、サムスンは深セン通信工場と天津携帯電話工場をそれぞれ閉鎖し、2019年は広東恵州携帯電話工場と江蘇昆山モーター工場も閉鎖した。
現在サムスンが中国にとどめている事業は、蘇州サムスン電子の液晶ディスプレイ技術有限公司と、オンラインで設立されたフラッシュメモリチップ工場だけとなった。
対照的に、サムスンはベトナムに投資を続けている。スマートフォンの生産に続いて、2億2000万ドルを投じて研究開発センターを設立すると発表した。人工知能、IoT、ビッグデータおよびその他の製品の開発を展開するという。ロイター通信は6月、サムスンが液晶ディスプレイの中国生産ラインの大半をベトナムに移す計画があると報じた。
(翻訳編集・佐渡道世)