紫禁城から知る古代中国の五行思想
万物は五行(五つの要素:金、木、水、火、土)から成り、物事には秩序がある。一見、複雑に見える物体や現象はすべて「五行」で構成されており、互いに関連しあいながら、目に見えない「法」によって、秩序が保たれていると古代中国人は考えた。
ユネスコの世界遺産に登録されている北京の紫禁城(故宮博物院)は、五行を取り入れた代表的な建築物といえる。金、木、水、火、土はそれぞれ対応する色や季節、方角があり、それらを配慮した造りが紫禁城にみられる。
金 ― 秋、白、西 (涼しさ、終了、夕日が沈む)
木 ― 春、緑、東 (成長、目覚め、朝日が昇る)
水 ― 冬、黒、北 (寒さ、凍土、北国の長い夜)
火 ― 夏、赤、南、(炎、輝き、繁栄、真昼の太陽)
土 ― 真夏、黄、中心 (肥沃、成熟)
古代中国人は、成長、繁栄、肥沃といった要素と対応する色、つまり緑や黄色、赤を好んで宮殿に使っていた。明王朝が始まると、紫禁城の東館の屋根は、生命力、成長などを願って緑が使われ、明の嘉靖(1522-1566) 年間には、屋根は緑から黄色に変わった。彼らは、黄色を使うことによって、紫禁城が世界の中心であることを示し、最高で絶大なるパワーがあることを表した。
一方、若き王子の屋敷の屋根は、成長を願って緑が使われ、東に建てられた。また、繁栄、正義、高潔と対応した赤は、柱や壁に使われた。
紫禁城にあった図書館、文淵閣は、黒の屋根に黒の壁が使われた。黒は水と対応し、冬、保存、貯蔵などと対応している。
黄色は土、または中心を意味し、中心は最高の権力を表し、全ての方角を見渡せる。従って、黄色は皇帝のみに許された色であって、皇帝の宮殿の屋根は黄色で、多くの場所に金箔が塗られていた。
(翻訳編集・田中)
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