【紀元曙光】2020年3月12日

「假的、假的、全都是假的!」。日本語に訳せば「ウソだ。ペテンだ。全部ヤラセだ!」になる。3月5日に武漢を視察した孫春蘭副首相らに対して、アパート楼上の各所から浴びせられた痛烈な罵声である。

▼司馬遼太郎さんが、井上靖氏を団長とする日本作家代表団の一員として訪中したのは1975年5月だった。文化大革命の最末期、林彪と孔子を批判するという、訳の分からぬ「批林批孔」運動の頃である。

▼中国の歴史や文化への深い造詣をもつ司馬さんであるが、今から45年前のこの時は、政権政党である中国共産党を、ある程度肯定的に評価していたことは致し方ない。が、そんな司馬さんでも「アホかいな」とつぶやく奇景を目にした。林彪と孔子の人形を、おもちゃの鉄砲で射撃させる装置である。これで子どもたちに批林批孔を教えるのだという。

▼司馬さんの「アホかいな」が今、筆者の頭のなかで無限に響いている。口が悪くて恐縮だが、東京弁で言えば「馬鹿じゃないか」となる。孫副首相が遭った「災難」を避けるため、習近平主席の武漢訪問に備えて、地元当局はアホらしいほどの準備をしなければならなかった。

▼視察する場所にだけ、肉や野菜の箱詰めを贈って住民のご機嫌をとっておく。公務員住宅なので、事前の鼻薬が効くと見たからだ。ただ、信用はできないので、各部屋やベランダには警察官を配置。小銃をもった狙撃手まで潜ませた。

▼3月10日、習近平主席の武漢視察。ヤラセ芝居のご一行は、住民が隠し撮りした映像で世界に発信され、再びその恥をさらした。やっぱり、アホかいな。

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