【紀元曙光】2020年2月15日

願わくは花の下にて春死なん、その如月(きさらぎ)の望月(もちづき)のころ。

▼そんな西行(さいぎょう)の古歌を思い出している。如月の望月は、本来ならば旧暦2月15日を指すが、新暦が染み付いてしまったせいか、今日を同日と思ってしまう。新暦の今日では、春には遠く、風も肌寒いのは分かっているのだが。

▼新暦と旧暦の季節感の差を大まかに修正するには、新暦の月日から、ひと月半ほど先を想像すればよい。「如月の望月のころ」であれば、3月中旬から下旬の、まことに春らしい時期に当たる。花は、もちろん桜の花である。

▼「私の願いが叶うならば春の日、桜の花びらが散る下で、心静かに世を去りたいものだ。2月の望月のころに」。生前にそう詠んだ西行は、その願いの通り文治6年(1190年)2月16日に入寂する。人間の死期とは、このように自身で精密な予定が立てられるものかどうか、筆者には分からない。

▼ただ一つだけ言えることは、命の限り生きて、社会や他者のため些かでも役に立ち、与えられた歳月をその人なりに充実させることができれば、最終段階で「わが人生、悔い無し」という、安心(あんじん)の境地に至ることができるのではないか。

▼新型肺炎が蔓延する今の中国には、悲しみが麻痺するほど多くの、痛ましい事例があふれている。あるネット上の動画に、どこの病院かは分からないが、3人の幼児が一つの遺体袋に入れられて運ばれていく場面があった。人の死は、もちろん軽いものではない。しかし軽く扱われるとするならば、その社会自体が重篤な病なのである。   

 

▶ 続きを読む
関連記事
京都菓匠「清閑院」が米ニュージャージーのMitsuwaにオープン。宇治抹茶の和菓子で、日本の四季と風雅を届けます。
離陸と着陸時だけ窓のシェードを開けるのはなぜ? 知ると納得の航空安全の話です。
止まらない咳は、体からのサインかもしれません。中医学で咳に用いられるツボ「孔最」と、その刺激方法を紹介します。
スマホや通知に追われる毎日。実は、ほんの少しデジタルから離れるだけで、睡眠や集中力、心の余裕が大きく変わるかもしれません。自然の中で心と脳をリセットする「デジタルデトックス」の効果に迫ります。
「朝活」は本当に正解なのか。30日間の実験が教えてくれた、続けることと休むことの意味。