中国当局、雇用安定再強化の指針を発表「失業ラッシュ」を強く意識
中国国務院(内閣に相当)は12月24日、雇用安定の再強化に関する指針を発表した。指針は「規模性失業風険(大規模な失業リスク)」との文言を複数回用い、失業問題に対して中国当局が神経をとがらせている様子を映し出した。
李克強首相が署名した『国発(2019)28号文件』は、「国内外のリスクや課題が増える中、雇用の安定化の圧力が強まっている」との認識を示した。指針は、2019年下半期以来、企業が粗雑に従業員を解雇したケースが急増していると指摘し、「雇用の安定化をさらに重要な位置づけにする必要がある」と強調した。また、「大規模な失業リスクを全面的に回避・防止し、雇用情勢の安定を全力で確保しなければならない」と発表した。
同指針は、民間企業や零細企業向け融資を拡大し奨励すると唱え、雇用の促進や失業者への失業保険や生活保護費の支給も強調した。
その一方で、「各地方政府は、大規模な失業による突発的な抗議事件に対応する体制を整えなければければならない。対立の激化と事態の悪化を防ぐ必要がある」「突発的で、大規模な失業リスクに備えて、条件のある地域では、失業リスク準備金を設立することも可能だ」と提唱した。
さらに中国当局は、失業問題について「プロパガンダ宣伝を行い世論を導く」よう地方政府に要求した。
大紀元コメンテーターの李林一氏は、同指針は今後、広範囲に人員が削減されるだろうという中国当局の見通しを反映しているとした。「民間企業は国内約9割の雇用に貢献している。景気後退と米中貿易戦の先行き不透明感で、数多くの民間企業が経営破たんに追い込まれた」
中国当局は、12月10~12日まで北京で、来年度の経済政策方針を決定する中央経済工作会議を開いた。会議は、来年も引き続き「穏字当頭(安定化を最優先事項にする)」スタンスであると強調した。特に、6つの分野(雇用、金融、貿易、外資、投資、社会予期)をさらに安定させていく姿勢を示した。
中国一の富豪で、電子商取引最大手アリババ集団創業者の馬雲氏はこのほど、国内で行われた企業家フォーラムで、1日に5人の友人から借金を頼まれたことを明かした。馬氏は、中国民間企業の「難局は始まったばかりだ」と発言した。
国務院の指針に関して、中国版ツイッター「微博」では波紋が広がった。
「このニュースを見た途端、もうすぐ失業ラッシュが本当に起きるのだなと思いついた。2020年は大変な一年になりそうだ」
「企業はすでに社員をどんどん解雇しているけど、報道されていないだけだ。(当局が)このニュースを通して、今までの深刻な状況を認めたということか?それとも、(当局が)企業に対して『穏やかに』リストラしなさいというメッセージを送っているのか?」
また、「会社に解雇されたばかりだ」「リストラされた」というネットユーザーらもコメントを書き込んだ。
(翻訳編集・張哲)