グレタさんを国連に出した環境団体、中国政府の代理人の疑いがあると米委員会に指摘されている。写真は9月27日、スウェーデンのストックホルムで行われた環境活動家によるパレードで、グレタさんの似顔絵が描かれたパネルを掲げる参加者(GettyImages)

グレタさんを支える環境団体、中国政府の代理人の疑い 沖縄「ジュゴン裁判」も担当

ヨットで英国から大西洋を横断して米ニューヨークに渡り、国連総会の関連パネルで怒りのスピーチを披露した16歳の環境活動家グレタ・トゥンベリさんについて、英字の主要メディアはこぞって取り上げた。彼女の登壇を調整した環境団体は、以前、米国委員会により、中国共産党政府の代理人の疑いがあると指摘されている。

9月23日、国連総会開催に合わせて開かれた気候変動サミットに、世界12カ国から集まった16人の8歳から17歳までの環境保護活動に関心を置く子どもたちが参加した。16人は、国連子どもの権利委員会に対して、気候変動に関する政府の行動の欠如に抗議する非難声明を提出した。

ニューヨークの国連組織ユニセフ(UNICEF)本部で開かれた記者会見で、グレタさんら代表者は「気候の危機により、生命の危機や多くの難民が生まれている。恐ろしいことです」と述べた。16人は、子どもの権利委員会を通じて国連加盟国に対し、環境変動への不十分な対応は子どもの権利侵害に当たると主張している。

ユニセフによると、16人は世界的な法律事務所ハウスフィールドLLP(Hausfeld LLP)および環境保護系の法律事務所アースジャスティス(Earthjustice)の公式代表という。子どもたちによる非難声明は、両所が準備した。

グレタさんの非難声明を用意した環境系法律事務所 中国政府代理人の疑い

2つの法律事務所は、世界各地で環境活動家たちの訴訟を代行している。

米下院天然資源委員会は2018年10月1日、アースジャスティスが中国政府に都合がよく、逆に米国に不都合な活動を米国内外で展開していることについて書簡で回答を求めている。

委員会は書簡の中で、同団体を外国代理人登録法(FARA)に基づき、アースジャスティスを「外国代理人」として登録する可能性があると伝えている。「外国代理人」に登録された組織は、年間予算や支出、支援団体などの情報開示を米当局に定期的に行う必要がある。

天然資源委員会議長ロブ・ビショップ(Rob Bishop)議員と、同委員会の監視・調査小委員会議長ブルース・ウェスタマン(Bruce Westerman)議員は書簡で、アースジャスティス代表アビゲイル・ジレン(Abigail Gillen)氏に対して、日本の沖縄県で継続的に米軍の行動に反対する活動を行っている環境活動団体・生物多様性センター(CBD)と協働する反基地活動について、問い合わせた。

書簡の中で委員会は、中国との争いを避け関係を維持しようとする環境保護主義者の動きが、米国の活動に影響を与えていると懸念している。

委員会はアースジャスティスについて「普天間基地の移転に反対する米国内での(代行)組織の政治活動と、沖縄での継続的な軍事プレゼンスへの否定的な動き」を問題視している。

委員会は2018年から、「外国から米国への天然資源と環境政策への影響」を調べるために、環境団体と外国政府の関連を調査している。同年6月には国防総省に対して、環境団体からの訴訟が国家安全保障に与える影響についての評価を求めている。

ジュゴン裁判

CBDは、米空軍海兵隊の普天間飛行場から名護市辺野古の移設には、絶滅危惧種の哺乳類ジュゴンの生態を侵害するとして、移設反対運動を展開している。

アースジャスティスは、米軍による沖縄の基地移転を阻止するために、2003年、ジュゴンを含む環境問題を訴えるCBDと日本の団体の代理として米国で訴訟を起こした。2018年8月にサンフランシスコ連邦地方裁判所はCBDを敗訴としたが、CBDは控訴した。書簡によると、アースジャスティスは裁判の他にも、基地移転を阻止するために米国内外でロビー活動を行っているという。

「アースジャスティスは、弁護人としての役割のみならず、米国大統領と日本の首相に公開書簡を送るなどして、基地移転を非難する宣伝キャンペーンに直接参加している」「アースジャスティスに代表される反基地組織の外国人は、政府当局へのロビー活動や世論に影響を与えるためのイベントの開催をしている。米国内では、すでに広範な政治活動を行っているようだ」と書簡にはある。

アースジャスティスから同委員会の書簡への回答はないもよう。委員会は2018年、環境保護団体の天然資源防衛協議会(NRDC)、世界資源研究所(WRI)、生物多様性センター(CBD)など、他の環境関連団体にも、外国代理人登録の可能性があると警告する書簡を送っている。

天然資源委員会が2018年9月5日付、WRIにあてた書簡で、中国政府との関係を問い合わせている。書簡によると、WRIは米高官に働きかけて、中国のエネルギー政策の正当性を宣伝するロビー活動を行っていると指摘している。

さらに、2017年以降、WRIは北京公安局と中国生態環境省の「指導と監督」の下で機能しているという。「WRIの指導者は、中国政府および共産党の高官と定期的に交流し、官製紙・中国日報や中国政府のプレスリリースおよび論説について肯定的な見方を宣伝するなどして、中国の環境プログラムを擁護している」

2019年2月、米ニュースサイト「ワシントン・フリー・ビーコン」は、エネルギー専門家の話として、WRIは国連で、米国のエネルギー使用に制限を課すよう要求するいっぽう、中国の主張を庇護していると伝えた。

50年の活動履歴のあるNRDCは、委員会の書簡により中国政府の代理人の疑いがあるとの指摘を受けて「地球上で最も人口の多い中国は、多くの国と将来に関わっている。私たちは、中国やその他の国においても、持続可能な未来を創造するのに役立つ仕事を誇りにしている」と回答している。

(文・佐渡道世)

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