中国当局、「金融安定化」で永久債発行を拡大 専門家「債務危機が深まる」
中国当局は今年に入ってから、永久債の発行を加速している。当局は永久債により集まった資本で、国有金融機関と国有企業の破たんを回避する狙いがあるとみられる。経済学者は、永久債の発行増大が中国の債務危機を意味すると指摘した。
中国債券情報サイト「中国債券信息網」23日の報道によると、中国の四大国有銀行の一つ、中国工商銀行は7月26日から30日まで、2019年無固定期限資本債券(永久債)を発行する。発行期限は5+N年。発行規模は800億元(約1兆3626億円)。
中国メディア「第一財経網」7月14日付によれば、今年1月、中国銀行が400億元(約6318億円)規模の永久債を発行して以降、民生銀行、華夏銀行、上海浦東発展銀行などが7月まで総規模1100億元(約1兆7375億円)の永久債を相次いで起債した。利回りは4.5%から4.85%に設定された。また、交通銀行、農業銀行、招商銀行など9つの銀行が永久債の発行計画を発表した。各銀行は今後、4900億元(約7兆7398億円)規模を発行する予定だという。
永久債は、国や企業などが資金調達のために発行する元本の満期償還のルールがない債券だ。発行体である国などが存続する限り、永久に利子を支払う。しかし、その代わりに、投資家は元本の償還を要求できない。この特徴から、株式投資と似ているとされている。
中国メディアの報道では、中国人民銀行(中央銀行)、銀行保険監督管理委員会などの政府機関は、永久債による資本強化を後押ししている。人民銀行は、永久債の流動性を高めるために、CBS(Central Bank Bills Swap)とのスワップツールを導入し、商業銀行が発行した永久債を、担保として使用できる中央銀行の手形と交換することができるようにした。また、中国当局は、保険会社などの機関投資家に対して、永久債への投資を許可した。
米サウスカロライナ大学の謝田教授は、中国当局が発行する永久債のリスクを警告した。「永久債は株式投資と似ているが、投資家には株主のような投票権を持っていないことが最大の問題だ。中国国内の投資家は発行体への管理監督ができない」
謝教授は、永久債について「欧米諸国では主流ではない」と指摘した。教授によると、米英両国の政府は過去、戦争という特別な事情で永久債を起債したことがあるという。
「中国当局が永久債を発行し始めたことは、国内不良債権の深刻さを浮き彫りにした。中小銀行が相次いで破たんした今、当局は国内金融市場を安定化させようとしている」
また、山東省に住む実業家の劉因明氏は、「当局は国内すべての国有企業と地方政府に永久債の起債を認めた。当局はP2P(オンライン融資)による資金供給がうまくいかなくなったとみて、永久債を通じて国民から資金を吸い上げようとしている」とし、個人投資家が大きな損失を被る可能性を危惧した。
今年4月、中国複合企業大手、中信国安集団は約2億元の利子を支払えず、同社が発行した永久債「MTN001」の不履行(デフォルト)を発表した。
国内経済の悪化に伴い、企業の社債利子の支払い能力が低下する中、経済学者の鞏勝利氏は、永久債の発行で中国の債務危機が深まると警鐘を鳴らした。
(記者・李新安、翻訳編集・張哲)