北京の病院内部を撮影した映像は、移植手術まで待機期間わずか1カ月未満という移植手術を受けた患者の発言を記録していた。写真は、ドイツで行われた、中国臓器収奪の周知目的のデモンストレーション(GettyImages)

北京武警病院、移植手術した患者「1カ月も待たなかった」=英BBC報道

6月17日から18日にかけて、英BBCワールドニュースは、中国の臓器強制摘出問題について報道した。番組では、北京の病院で移植を待つ患者が「数週間で移植手術を受けられる」と答えた。通常ならば数年待たなければならない移植手術が行えるのは、国内収容施設が、需要に応じて臓器を強制摘出する「臓器バンク」になっているためだと専門家は指摘する。

報道には、2018年11月に北京の武装警察総合病院の内部を秘密裏に撮影した映像が含まれている。一人の男性患者は、尿毒症を患っていたが、1カ月も待たずに腎臓移植を受けられたという。費用は35万元(約500万円)だという。質問者が「その金額は高いのか?」と聞くと、患者は「天津より安いだろう」と答えた。天津には中国最大の移植センター、天津市第一中心医院の東方臓器移植センターがある。

別の男性患者は、「私は1カ月待っただけ」で移植手術を受けることができたと答えた。「血液型はA型のほうが(ドナーが)見つかりやすいそうだ」と述べた。

日本で腎臓移植の待機期間は平均で14年8カ月。米国も数年は待たなければならない。中国はわずか4週間で手に入る。生命倫理の上で考えられない短さだ。2006年に臓器強制収奪問題を公にしたカナダのデービッド・マタス人権弁護士は共著で、拘束された数多くの人々が「生きた臓器バンク」として、需要に応じて臓器を摘出されている、と分析している。

中国当局は1984年10月、死刑囚の臓器を移植に使用することを許可した。国際社会の批判を受けて2015年、死刑囚の臓器の利用を停止すると発表した。しかし、中国全土の移植病院の移植件数は推定6万~9万件に維持されており、公式ドナー登録者を大幅に上回る臓器の供給があることから、収容者からの臓器強制摘出は続いていると考えられている。

BBCが公表した北京の武装警察総合病院の映像は、信条を理由に中国国内の刑務所に十数年間収容され拷問を経験した法輪功学習者・于溟(ウ・メイ)さんが秘密裏に撮影したもの。彼は出所してから、病院内部の撮影を試みた。2019年1月に米国へ亡命し、人権団体に映像を提供した。于さんはほかにも、遼寧省の馬三家刑務所の内部映像なども海外へ運び出した。そこには、拷問で瀕死状態になっている法輪功学習者の姿が映っている。

国際的な人権団体などは十数年前から、中国当局が収容者の臓器を本人や家族の同意なく強制的に摘出し、国内・外移植希望者のための移植用臓器として使用していると指摘してきた。

2019年6月21日、米国のサム・ブラウンバック大使(信教の自由担当)は米国務省の世界信仰の自由に関する年次報告の発表会見で、「すでに繰り返されてきた報告」と強調したうえで、中国当局は良心の囚人を含む法輪功学習者、ウイグル族、チベット仏教徒、地下キリスト教信者たちに対して、強制的な臓器収奪を行っていると述べた。これは「すべての人の道徳にショックを与えることだ」とした。

2019年6月17日、臓器収奪問題について50人の証言者と提出された証拠を1年間調査した、ロンドンの民衆法廷は「強制臓器収奪は、中国全域で何年にもわたり相当な規模で行われている。法輪功学習者がおそらく主な臓器源」との最終判決を下した。

民衆法廷の議長を務めたジェフリー・ナイス卿は裁定のなかで、「強制臓器収奪は、前世紀の大量虐殺の犯罪にも匹敵しないほどの悪意がある」と形容した。

(編集・佐渡道世)

関連記事
台湾の外科医が中国での違法な臓器移植仲介の罪で起訴された。今回の起訴は台湾での2015年の法改正以来、初めて。強制的生体臓器摘出が再燃する中、医療倫理や人権問題が焦点となっている。
12月10日、中国で厳しい弾圧の対象となる気功、法輪功の日本在住の学習者による証言集会が開催された。出席者は中国で家族が拘束されている現状や、自身が拘束中で受けた拷問の実態を訴えた。現在米国在住の程佩明さんもオンラインで参加。程さんは収容中に、拷問を受け、臓器を摘出された実体験について語った。
ドキュメンタリー映画『国家の臓器』が上映された。映画は中共による、生体臓器摘出の実態を描いており、映像を見た観客からは「非常に非人道的な行為だと強く感じた」「もっと多くの人に事実を知ってもらう必要がある」などのコメントが挙がった。
中共による臓器摘出から生還した程佩明さんが真実を告白。暗殺の危機に直面しながらも、真実を語り続ける姿勢に世界が注目し、米国も保護を進める。人権侵害の実態に対する国際社会の連帯が求められている
中国の中南大学湘雅第二病院に勤務していた羅帥宇氏が、不審な死を遂げた。生前の録音から、同病院が臓器移植研究のために子供のドナーを求めていた可能性が浮上。彼の家族は、羅氏が病院告発を計画していたことから口封じされたと主張している。