香港市民約200万人が16日、「逃亡犯条例」改正案の撤回と林鄭月娥・行政長官の辞職を求めて大規模な抗議デモを行った(HECTOR RETAMAL/AFP/Getty Images)

条例改正案で揺れる香港情勢 富豪らが資産を海外移転

香港市民は16日、中国国内へ犯罪容疑者を引き渡すことを可能にする「逃亡犯条例改正案の完全撤回を求めて、先週に続き大規模な抗議デモを行った。香港政府は改正案の審議延期を発表したが、撤回しない姿勢を示している。情勢が不透明ななかで、香港の富裕層が次々と資産を海外に移し出していることが報じられた。

ロイター通信14日付によると、政治・経済リスクに敏感な香港の富豪らはこのほど、資産を海外に移し始めた。香港の資産運用アドバイザーは、顧客の1人は米シティバンク香港支店に預けていた1億ドル(約109億円)の資産をシンガポールに移転したと話した。

報道は、このほどドル高・香港ドル安が進み、香港ドルの対ドル為替レートは1米ドル=7.8香港ドル台を上回り、20年ぶりの高値を付けたことが、急激な資金流出とドルへの高い需要を反映したとの見方を示した。

また、数年前に中国本土から香港へ移住した中国人富豪は、米ラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に対して、「香港の富豪らは今、できる限り全ての資産を海外に移すそうとしている。(改正案が可決すると)人権、資産の保障がなくなるので、逃げるしかない」と述べた。

香港の行政長官に直属するシンクタンク、中央政策組の顧問を務めた劉細良氏は、富豪のほかに、香港企業も撤退を始めていると語った。劉氏によると、香港国際空港の第3滑走路の建設事業に参加すると表明したある企業は、香港の政治・経済に「問題が生じた」との理由で、事業参加保証金の返還申請を放棄したうえ、事業の投資を取り消した。

香港経済学者の徐家健氏はRFAに対して、「周りの富豪たちは海外への移住と投資に着手している。香港の最も裕福な人たちは数年前にすでに資産を外国に移した」と話した。

劉氏によれば、富豪らは「逃亡犯条例」改正案によって、香港の世界金融センターとしての地位を確立させた司法制度の崩壊を最も危惧している。

(翻訳編集・張哲)

関連記事
2023年5月25日に掲載した記事を再掲載 若者を中心に検挙者数が急増する「大麻」(マリファナ)。近日、カナダ […]
中国共産党が7月に反スパイ法を改正し、邦人の拘束が相次ぐなか、外務省が発表する渡航危険レベルは「ゼロ」のままだ。外交関係者は邦人の安全をどのように見ているのか。長年中国に携わってきたベテランの元外交官から話を伺った。
日中戦争の勝利は中華民国の歴史的功績であるが、これは連合国の支援を受けた辛勝であった。中華民国は単独で日本に勝利したのではなく、第二次世界大戦における連合国の一員として戦ったのである。このため、ソ連は中国で大きな利益を得、中共を支援して成長させた。これが1949年の中共建国の基礎となった。
香港では「国家安全法」を導入したことで、国際金融センターとしての地位は急速に他の都市に取って代わられつつある。一方、1980年代に「アジアの金融センター」の名声を得た日本は、現在の状況を「アジアの金融センター」の地位を取り戻す好機と捉えている。
米空母、台湾防衛態勢に 1月29日、沖縄周辺海域で日米共同訓練が挙行された。日本からはヘリコプター空母いせが参 […]