ウォール街が中国のために動いている バノン氏が中国危機委員会で発言

米国に20年ぶりに設立した外交政策組織「現在の危機に対応する委員会:中国」は4月25日、ニューヨークで、中国による米国に仕掛けられた経済の超限戦をテーマにセミナーを開いた。

危機委員会は、米国が直面する国家安全保障上の危機に対応するため、外交や安全保障の政策提案を行う組織。これまで50年代、70年代に対ソ連、00年代に対テロ政策のために発足し、今回は対中国がテーマとなる。国防実務家や経済、政治、中国の各専門家、宗教の自由と人権の活動家ら数十人あまりがメンバーに選ばれ、3月にワシントンで発足した。

4月25日のセミナーで講演したトランプ大統領政権の元戦略主席補佐官スティーブン・バノン氏は、1999年に中国軍高官が発表した「超限戦」について解説した。バノン氏はこの理論について、どのように中国共産党が民主主義のルールを打破していくかを解説していると語った。

「超限戦」の核心的な目標は、正規の戦争状態に突入せず、浸透工作を通じて、対象国に気付かれないように、目標国の経済的なライフラインを掌握することだと、バノン氏は説いた。

バノン氏は、中国共産党政府の政策である、中国でビジネスを展開する企業の強制技術移転、人民元操作、一帯一路など、経済的な侵略性のリスクをはらむとした。

いっぽうで、バノン氏は米国の対中姿勢が、中国国内社会にも影響を与えると述べた。「中国人の敵は明白に、中国を危険な道へ導いている中国共産党指導部だ。このため、中国人と対立するのではなく、中国人が自由になるのを助けることだ」と述べた。

米中貿易協定 監査可能な合意を

進行中の米中貿易交渉について、バノン氏は、監査メカニズムの重要性を説いた。「さもなければ過去の失敗を繰り返すことになる」とした。

米国の著名な中国問題専門家で経済アナリストの章家敦(Gordon Chang)氏は、米国は中国共産党政権によりもたらされた経済危機に直面しているとし、米中貿易交渉には、法律執行体制の確立が求められているとした。

大手ヘッジファンドGeo Ivestigの創業者ダン・デイビッド(Dan David)氏によると、今年は中国企業の詐欺に関する報告書を発表する予定だという。

デイビッド氏は、海外の会社に対して厳格な調査を行うことで知られ、調査対象となった中国企業のほとんどは姿を消したと語った。

デイビッド氏は、中国人や中国に対する偏見を持っていないと強調し、現実に中国政府と米国銀行の行いは詐欺行為があり、誰も裁判に掛けられたり、制裁を受けていないことが問題だとした。

詐欺行為が取り締まられない理由として「誰かが真実を明かしてしまえば、不当に扱われることになるからだ」と述べた。

デイビッド氏は中国資本は、海外の「言論の自由を買っている」と指摘した。「中国企業を批判することはできなくなっている。反中だと決めつけられてしまう」「もし米国が中国で何かを盗めば罰を受ける。しかし、その逆は成立しない」「私達は互恵関係を築くべきだ」と述べた。

デイビッド氏の体験は、国内外で受賞したドキュメンタリー映画「チャイナ・ハスラー(中国の喧騒)」(2018)を通じて、多くの米国人は、中国上場企業の詐欺行為を知るようになった。

映画の印象的な一幕は、中国国内工場の「ニセ稼働」だ。海外からの投資家が、対象となる中国工場を訪れる日、工場設備は稼働し、敷地内の噴水も吹き上がった。しかし、投資家が去ると、工場の電気は消され、噴水も止まった。

「中国で外国資本の調査会社が立ち入ることは違法であり、投獄の危険がある」とデイビッド氏は映画の中で明かしている。「問題を指摘した場合、刑務所に入れられる」

アメリカ退職基金、中国監視カメラ大手の株式購入疑惑

レーガン政権時代の国家安全保障委員会の国際経済問題担当代表で、現在ワシントンを拠点とする、安全保障諮問サービス企業RWR Advisory Servicesの社長ロジャー・ロビンソン氏は、米国のファンド・マネージャーと一般の米国市民の間には、大きなギャップがあると指摘した。

ロビンソン氏は、カリフォルニア州の教員年金基金が、中国監視カメラ大手 「海康威視(ハイクビジョン)」 の株式を購入する問題に触れた。同社は中国国内にいる数百万人のウイグル人の監視を重点的に行っている。

「自分の退職年金制度の17から22%が、中国企業の株であると知ったら、驚くだろう。しかし、加入者はここから脱出することもできないし、やがて(中国企業の)悪意のある詐欺行為で、投資と退職年金を目減りさせていく」

ロビンソン氏はかつてから、米国の州の公共年金基金やMSCI新興市場指数、その他の管理基金は「人権や国家安全保障に関してあまり調査していない」と疑問視していた。

米国のメディアは3月、米政府が中国共産党によるウイグル族への大規模な弾圧を調査している間、米国の大型投資ファンドは相次ぎ、この人道犯罪が疑われる監視システムに加担する海康威視の株式を売却した報じた。

しかし、米カリフォルニア州教師退職システム(Calstrs)とニューヨーク州教師退職システム(NYSTRS)は、今も海康威視の株を保有している。

海康威視のファンドマネージャーはかつて、アメリカ投資家が新疆で起きた弾圧に見て見ぬふりしているのは、「活気ある」中国の監視市場から利益獲得を予想しているためだと明かしたことがある。

ヘイマン・キャピタル・マネジメントのカイル・バス(Kyle Bass)最高投資責任者(CIO)は、米国の公的年金基金が、制裁対象になりうる国や企業に対して投資できることに疑問を呈した。

バス氏は2008年、世界的な金融危機前、米住宅市場を空売りしたことで知られる。また、長期的には人民元の空売りドル為替を作った代表的な人物でもある。

「中国人民元が国内であふれ、外国為替市場に流れれば、人民元の為替相場は下がるだろう」とバス氏は述べた。

バス氏はずっと、中国の国内通貨の過剰発行がすでに非常識な市場レバレッジをもたらしていると考えている。もし債務問題が爆発すれば、中国の資産規模は2兆5000億ドル以上が蒸発しかねない。これは、米国の2008年金融危機のときの銀行救済計画の3倍以上になるとしている。

経済成長の鈍化と銀行の信用下落の問題を解決するためには、25兆ドルを超える人民元の再市場が必要だとした。

トランプ大統領政権の元戦略首席補佐官スティーブン・バノン氏は、「ウォール街中国経済の真相を知らないと思っているかい。彼らはただお金を稼ぎたがっているだけだ」と批判した。

また、バノン氏は、奇妙なことにウォール街の人々は中国代理人として動いていると指摘した。

「米国のビジネス界は中国共産党のロビー機関であり、ウォール街は投資家向けの広報部門だ」

(翻訳編集・佐渡道世)

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