非人道性疑われる中国臓器移植ビジネス 日本が係わらないよう呼びかけ 山田宏議員、城内実議員ら
非人道的行為が強く懸念されている中国臓器移植に、日本が係わらないよう問題を周知し、国内の臓器移植環境と法整備を働きかける国会議員や地方議員、ジャーナリストらからなるSMGネットワーク(医療殺人を止めよ:Stop Medical Genocideの頭文字)が23日、正式に発足した。代表は外交評論家の加瀬英明氏。参議院議員会館で開かれた発足式では、会の趣旨に賛同する山田宏参議院議員、城内実衆議院議員らが挨拶を行った。カナダとイスラエルから招かれた同問題専門家3人がスピーチを通じて、日本の臓器移植法の整備を後押しした。
SMGネットワークは2017年はじめに都内で検討会を開始。無実の人々が大量に殺害されていると懸念される中国の臓器移植ビジネスを追及し、この非人道的行為に日本人の移植希望患者や家族、医療関係者、行政、医療保険会社など民間企業が係わらないよう、広く呼び掛ける。目標は、臓器移植手術の安全性と合法性、生命倫理が確立されていない国に移植目的で渡航することを禁じる臓器移植関連法案を可決すること。同様の法案は台湾、イタリア、スペイン、イスラエル、ノルウェーで可決している。
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山田宏参議院議員「人類文明を逆行させるようなこと、堂々と行われている」
「人類文明を逆行させるような(残忍な)ことが堂々と行われている」。23日参議院議員会館で開かれたSMGネットワーク発足会では、山田宏参議院議員が挨拶のなかで中国臓器移植の闇についてこう例えた。
山田議員は、賛同する長尾敬衆議院議員らと共に、厚生労働省に対して、海外で臓器移植を行う日本からの患者について、データベースを作るよう要請しているという。
いっぽう、この問題が表沙汰になることを恐れる、中国政府側の働きかけがあるとも明かした。在日中国大使館の程永華駐日大使から、山田議員に近い知人を通じて「食事でもしながら話したいことがある」などと誘われ、中国臓器移植問題への係わりから退くよう「助言」があったという。
山田議員は、同問題についての日本での認知の低さに警鐘を鳴らした。日本の大手マスメディアの情報伝達能力に依存しない「インターネットの力は大きい」として、中国臓器移植の闇にスポットを当て続けていくように提言した。
2017年11月に開かれたSMG関連会議でも、発起人である加瀬英明氏は「欧米では中国臓器移植の問題は、政府、医療関係者、市民レベルで周知のことだ。日本で知られていないのはとても不自然である」と述べた。
発足会に出席した城内実議員は、中国共産党政権による臓器ビジネスについて「国内ではナチス政権もびっくりするようなこと(残虐行為)を行っているが、こうした国内問題から目を背けさせるために、日本に対して歴史問題に絡む外交戦略を行っている」と指摘。また、城内議員は「中国側を変化させることに力を入れるより、日本国内で法整備を行い、民主主義や平和を愛する日本と価値を共有する国と連携して、国際的な圧力を掛けるべきだ」と述べた。
同日、SMGネットワーク地方議員の会も同時発足した。会の趣旨に賛同した地方議員は2018年1月までで47人。代表世話人は神奈川県逗子市議会議員・丸山治章氏、副代表世話人は新潟県柏崎市議会議員・三井田孝欧氏と広島県議会議員・石橋林太郎氏。2016年、中国共産党による人権弾圧と、臓器強制摘出問題について強く懸念し、国に対応を求める鎌倉市議会の意見書可決を率先した上畠寛弘氏(現・神戸市議会議員)も名を連ねた。
SMGネットワーク事務局長でジャーナリストの野村旗守氏は「この医療殺人は歴史問題や政治性、思想性にかかわらない人道犯罪だ。ただ臓器のために多くの人が殺されている。(法整備に向けて)日本では地方議会から超党派で取り組んでもらえるよう働きかけたい」と述べた。
わずか1カ月待てば、臓器移植ができる その実態は?
中国は、年間の臓器移植手術件数が1万件と公式に発表している。しかし、ノーベル平和賞候補者らの国際調査によると、少なくとも6万から10万件が行われているという。加えて、最近明かされた内部潜入映像では、中国の移植手術までの待機時間はわずか1カ月~1.5カ月と医療関係者が話す記録もある。日本での待機時間は、心臓、肝臓など各臓器によるが数年~十数年。中国はそれに比べると信じられないほどの短さだ。
参考:戦慄の「脳死マシーン」再現、中国の移植病院に潜入取材=韓国報道
無尽蔵に臓器が供給されているー。登壇したカナダ勲章(日本の褒章に相当)受章の国際弁護士で中国臓器移植問題を10年調査している、デービッド・マタス氏は、発足会でのスピーチで述べた。
なぜ、中国では大量の手術をこなし、医療倫理を逸脱する超短期間で移植手術を受けられるのか。マタス氏によると、年間数十億ドル規模の中国移植ビジネスを支えるのは、中国で囚われの身となった無実の人々であり、彼らは本人の意志と関係なく臓器を摘出され、証拠隠滅のために殺害されているという。マタス氏と同時に来日した、カナダ政府の元アジア太平洋地区担当大臣デービッド・キルガー氏らが2016年に発表した680ページもの最新報告書「中国臓器狩り/ザ・スローター:2016年(外部リンク)」で明かしている。
報告書では、次の点を指摘する。
▼中国では、大量の移植手術を賄う臓器を供給するため、『人体および臓器バンク』が存在する。彼らは血液型や健康検査を行われており、国内外の移植希望患者の希望に応じて、手術のたびに計画的に殺されている
▼中国の臓器移植件数は、国が公式に登録する移植病院だけの推計で毎年6万5000件~10万件(記者注:別のNGO団体「追査国際」は19万件以上と推計)
▼法輪功学習者、チベット族、ウイグル族、地下教会信者など無実の人々を含む、収容者たちが、生きたまま臓器を強制摘出され殺害されている
▼病院のみならず、少数民族や弾圧政策を執行する共産党、人民軍、警察など、国家ぐるみでなければ成し得ない巨大事業
▼移植希望患者は中国国内が6割、残りは韓国、中東、日本など海外からの中間層~富裕層が対象と推計(具体的な数は各国の調べがなければ把握困難)
▼都市部には豪華ホテルのような移植病院が次々と建設され、年間数十億ドル規模の中国移植ビジネスとなっている
このたびの発足会には、イスラエルの心臓外科医、ジェイコブ・ラヴィ氏も参加。ラヴィ氏は、2008年に成立したイスラエルの臓器移植法に尽力した。同法では、違法性が疑われる海外への臓器移植ツーリズムを禁止する目的での保険料支給の停止、ドナー登録者には将来臓器移植が必要になった場合、優先的に移植手術が割り当てられるとの条項を盛り込まれた。
臓器移植手術は、移植希望患者に合わせた臓器を持つドナー(心停止や脳死)が偶然に現れなければ移植手術はできない。ラヴィ氏は、中国では「何月何日の何時に臓器移植が予約できる」という医療倫理上ありえないことが可能になっていることについて強い懸念を示した。「臓器移植のために計画的に人が殺されていることの有力な証明だ」と述べた。
「日本では、厚生労働省や民間の保険会社から、海外移植ツーリズムにも保険料支給の適応の動きがあると聞く。日本で問題性の認識を高めるべきだ」とラヴィ氏は提言した。
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いっぽう、地方議会での認知は高まりつつある。違法性の疑われる外国渡航移植の危険性を指摘し国内法整備を求める意見書は、青森県上北郡六戸町議会(2014年、同議会リンク)、鎌倉市議会(2016年)、埼玉県議会(2017年)、名古屋県議会(同年)と4議会から提出されている。
2008年6月、国際移植学会が中心とした国際会議で、臓器取引と海外移植ツーリズムを禁止し、自国での臓器移植の推進する「イスタンブール宣言(日本語訳付きリンク)」が日本を含む180カ国で採択された。この宣言により、日本でも臓器移植法の改正論議が高まって、2009年に15歳未満の臓器提供を認め、本人の意思が不明な場合には、家族の承諾で臓器を提供できる改正法が成立、2010年7月に全面施行した。
日本の臓器移植法施行から既に20年が過ぎた。国民に信頼されるより安全な法律の整備を、国は求められている。
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動画の続き、質疑応答
(文・佐渡道世)