「米中包括経済対話」19日に開催、対中貿易赤字が焦点に
中国税関当局が13日に発表した貿易統計によると、今年1~6月の対米貿易黒字額は前年同期比6.5%増加した。選挙中、中国製品に高い関税を課し対中貿易赤字削減を約束したトランプ米大統領は、19日に米中高官が出席する「米中包括経済対話」で、農産物や金融サービスの市場開放をめぐって中国当局に圧力をかけるとみられる。
中国の汪洋・副総理が筆頭に、商務部、財政部、外交部などの高官が同対談に出席する予定。米国側は、ウィルバー・ロス商務長官とスティーブン・ムニューシン財務長官らが出席。
「100日計画」の成果が限定的
トランプ米大統領は今年4月に、中国習近平国家主席と初めての米中首脳会談を行った。当時、トランプ大統領は北朝鮮の核・ミサイル問題で両国の連携を深めるため、対中貿易赤字を批判しなかった。
また両首脳は、米中貿易不均衡是正の「100日計画」の策定に合意した。同計画には、米国産牛肉の中国への輸出、中国産調理済鶏肉製品の米国への輸出、外資系企業が中国で信用格付けサービスを提供することの許可、米国政府の中国への液化天然ガス(LNG)輸出拡大など10項目が含まれる。
一部のメディアによると、「100日計画」は中国当局から提案されたもので、市場開放と構造改革を行うことによって、トランプ政権の批判を交わす目的だったという。
7月16日に同計画は100日間を迎えたが、10項目の内容に合わせてみると、成果は限定的と言える。
過去の牛海綿状脳症(BSE)発生の理由で中国当局は、米国産牛肉の輸入を禁止した。今回の合意で中国は国際的な安全基準などを満たした米国産牛肉の輸入を今年7月16日までに始めるとうたった。ただ、食品安全の規制で、中国当局が再開した米国産牛肉の輸入量は牛肉輸入量全体の10~15%にとどまる。
一方、金融サービスの面では、中国当局は米国のクレジット会社に対して電子決済サービス開始を認めたが、米金融機関関係者はロイター通信に対して、「中国現地のクレジット会社が市場を独占しているため、(米国企業は)ビジネス展開ができない」と話した。
「100日計画」に関して、米国の格付け会社が中国に進出できるかどうかはまだ不明で、中国の鋼鉄業過剰生産能力への対処も滞っている。
トランプ大統領、「対中貿易赤字を必ず解決する」
今月上旬、ドイツ・ハンブルクで開催された20主要カ国・地域首脳会議(G20)では、習近平国家主席とトランプ大統領は今年2回目となる首脳会談を行った。
トランプ大統領は習主席に対して、「米国にとって、中国との貿易には非常に大きな問題がある」と話し、今後中国当局に一定の譲歩をするように圧力をかけると示唆した。
米中貿易をめぐって、近日トランプ政権の動きをみると、同政府は人民元の為替操作と鉄鋼の過剰生産に圧力を強める可能性が高いとみられる。
「日本経済新聞」の英語電子版「日経・アジア・レビュー」(18日付)によると、大統領選挙戦中にトランプ大統領の経済顧問を務めたジュディ・シェルトン氏は、米政府はすでに中国を為替操作国に指定する大統領令を作成し、「大統領がまだ署名していない」と述べた。
また米ニューヨークタイムズ(13日付)によると、12日フランス訪問でパリに向かう大統領専用機「エアフォース・ワン」で、トランプ大統領は随行する米記者団に対して、中国の習近平国家主席と良好な関係を築けたとしながらも、中国当局と他の国は鉄鋼製品をダンピングしており、米国鉄鋼業に打撃を与えたと批判した。大統領は、今後輸入制限と関税賦課の措置を採る姿勢と示した。
双方譲らない米中、貿易戦はあるか
中国問題に詳しい米民間シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のスコット・ケネディ氏は、米政府が貿易問題で中国当局に圧力をかけるが、米中貿易戦の可能性が低いとの見方を示した。
ケネディ氏は、中国当局は現在の米中経済関係から多大な恩恵を受け取り、米中貿易の現状に満足しているため、あくまで「現状維持」を望んでいると述べた。中国当局は今後、双方の対立を避け、米国との交渉期間をできる限り伸ばしていく作戦を展開する可能性が高いと推測した。
トランプ政権が中国製品に対して45%の関税をかけるとすれば、中国の国内総生産(GDP)は現在の規模から約3%縮小されるとみられ、すでに経済失速している中国経済がいっそう悪化する。
また、中国当局は現在日本に次ぎ、世界2番目の米国債保有国だ。米中貿易戦が勃発すれば、中国当局は米国をけん制する切り札として、世界金融市場で米国債を大量に売却することが予想される。そうなると各国を巻き込んで金融市場に大きな波乱をもたらされる。
トランプ大統領は習近平主席と良好な関係を築いたとアピールしてきたが、「忘れてはいけないのは、彼が代表しているのは中国、私が代表としているのは米国。このことに変わりはない」とエアフォース・ワンで随行記者に語った。
(翻訳編集・張哲)