【大紀元日本9月26日】メトロ千代田線「湯島」駅で下車して1番出口から地上に出て、静かな裏通りを行くと3分で旧岩崎邸庭園の正門前に着いた。門を入って、洋館へ続くゆるやかな坂は砂利道にもかかわらず歩きやすく、両側の木々からの風が心地よい。
ゆるやかにカーブした先に見えてきたのは、ジョサイア・コンドル(1852~1920)が設計した旧岩崎家本邸の木造2階建洋館(1896年;明29)だった。当時の当主・三代目岩崎久弥(1865~1955)が岩崎家一族や外国人、賓客を招いてパーティを開くために建てられた明治時代を代表する本格的な洋風建築で、棕櫚の向こうに見える宏大な建物は、異国情緒に満ち溢れていた。
棕櫚越しに見る洋館
洋館正面玄関扉上にはステンドグラスがあり、玄関やベランダのタイル、1階ホールの飾り柱や婦人客室のシルクの日本刺繍が施された布張り天井など、あらゆる場所に贅を凝らした細工が施されていた。また、都市ガスを熱源にしたスチーム暖房が全館に配備されていた。そして、トイレの洗面台の陶器、便器には「ドルトン」(現・ロイヤル・ドルトン)の銘が刻まれていた。しかも水洗式であったのには驚かされた。2階ベランダから見る芝庭は素晴らしかったが、撮影禁止でカメラは出さずじまいだった。
洋館から船底天井の渡り廊下でつながる和館には、現在、書院造の大広間を始めとした3部屋しか残っていない。和館内部の壁絵、襖絵、板絵のほとんどは、橋本雅邦(1835~1908)の筆といわれている。前庭には、なんとも言えない姿のよい大きな手水鉢が置かれていた。
芝庭から表玄関に向かう途中に、スイス山小屋風の撞球室(ビリヤード・ルーム)があった。完成は1897年(明30)以降といわれている。木肌をそのままにした素朴な外観は、豪華な本館とは対照的だった。この建物は、本館とともに、1961年(昭36)に国重要文化財に指定されている。1969年(昭44)には、和館大広間と洋館東脇にある袖塀が、1999年(平11)には宅地、煉瓦塀、実測図が国重要文化財に指定された。
帰り道には、不忍通りを渡って弁天堂(谷中七福神の一つ)がある不忍池に行ってみよう。のんびりと不忍池を1周すれば、日常とは違う風景を見ることができると思う。
旧岩崎邸庭園 110-0008東京都台東区池之端1-3-45
電話:03-3823-8340
開園時間:9:00~17:00 休園日:年末年始(12月29日~1月1日)
入園料:一般および中学生400円、65歳以上200円
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。