ゴマをする人物には気をつけよう

古今東西、権力者が腐敗するのは世の常。取巻きたちが送る金や貢物の他に、最も権力者を堕落させるのは、周りからの「賞賛の声」。褒め言葉は聞けば聞くほど耳に心地いいが、その一方、自分自身も含めて周りが見えなくなってくる。「俺の言うことはいつも正しい。俺は才能があるから・・・」と、権力者はますます勘違いすることになり、周りがどれだけ迷惑しているのかも分からなくなってくる。つまり、ますます自分を幻想の世界へと閉じ込めてしまうのだ。古人曰く、「自分の機嫌を取ろうとする人とは距離を置くべし」。常に真実を見極めるには、権力を得てもゴマをする人たちに警戒することだ。古代中国に、こんな逸話がある。

 中国の唐の時代、皇帝の唐太宗が退朝した後に散歩していると、大きな木があった。枝葉が繁茂する見事な枝ぶりの大木を目にして、唐太宗はたいそう機嫌がよくなった。側にいた宇文士及(うぶんしきゅう)は太宗の機嫌を取ろうとして、その大木を褒めちぎった。すると、唐太宗は厳しく宇文士及を叱りつけた。「魏徴(ぎちょう)(※)は、卑しい性格をした人物とは距離を置くようにと忠告してくれた。お前はそのような人物かもしれないと思っていたが、今まではっきりとは分からなかった。しかし、今、そうであることが分かった」。宇文士及は恐れ入りながら、許しを乞うた。

 ゴマすりの上手い人は、権力者を喜ばせる。取巻きたちは権力者の前で真実を曲げ、表面を誤魔化すことに長けている一方、正直な人や真実を話す人を打ち落とす。権力を得たなら、取り入ろうとする人たちとは一線を画したほうがいいだろう。高尚な心を保つのはとても難しいが、堕落するのはいとも簡単なのだから。

(※)皇帝の誤りを諌め、忠告する諌議大夫(かんぎたいふ)として唐太宗から重宝された人物。太宗は直言厳しい魏徴を側に置き、常に自身を律することに努めたという。
 

 (翻訳編集・郭丹丹)