孔子生誕2562周年 共産党イデオロギー宣伝に乱用される

【大紀元日本10月7日】9月28日は中国儒学の始祖・孔子の生誕2562周年記念日。中国政府の主催で、国内の多くの地区で記念行事が大々的に行われた。近年、中国政府は孔子の儒学を批判する姿勢を180度転換し、大々的に孔子を宣伝するようになった。

海外では孔子学院が相次ぎ設立されている。国内の学者たちは、中国政府は孔子の儒学を復興させようとしているのではなく、孔子の名を借りて長年来国民を洗脳してきた共産党文化を粉飾している、などと指摘する。

中国国営新華社の報道によると、今年孔子の故郷の山東省で行われた孔子記念イベントには約5千人が参加した。北京や南京、河北などの孔子の関連施設でも同様の行事が行われた。

手のひらを返すような豹変ぶり

中国共産党政権設立後は、「儒家思想は革命に反する」として孔子は完全に否定され、特に文化大革命においては徹底的に弾圧された。多くの孔子研究家は海外に逃れ、国内に留まった人は迫害に耐え切れず自殺した者もいる。

孔子の末裔で第77代の嫡孫・孔徳成氏は1949年4月、中国共産党政権設立の直前に台湾に移住した。1960年代の文化大革命ではその先祖代々の墓や、儒学関連の史跡及び施設が深刻な破壊を受けた。2008年に台湾で死去した孔徳成氏は、その最期まで中国の地を踏むことはなかった。

しかし2005年以降、孔子は弾圧の対象から党の宣伝材料に変った。孔子の生誕を祝う祝典が国家行事として執り行われ、孔子の彫像が大量に増やされ、国外では多くの国で孔子学院が相次ぎ設立されている。同学院は中国政府が海外の大学などの教育機関と提携し、中国語や中国文化の教育及び宣伝を目的とする公的機関である。孔子の名を冠しているが、あくまでも語学教育機関であって儒学の教育機関ではない。

孔子学院の公式ホームページによると、2004年にプロジェクトがスタートしてから昨年10月までに、世界の91の国と地域に322の孔子学院が設立され、34の国に分校に相当する孔子教室が369カ所設けられている。日本には12の孔子学院と6つの孔子教室があり、その数はアメリカ、イギリス、タイに続き世界で4番目に多い。これらの施設に中国国内から多くの教師が派遣されている。

「孔子」という無形資産を乱用

2千年前の孔子は「仁・義・礼・智・信」「天・地・君・親・師」を重んじる儒学を打ち出して、個人の教養の修行を最重要視し、人間と社会の道徳基盤を築こうとした。孔子が提唱している「大同社会」の理念は、「天下は公民のものである」「才能のある人と賢人を起用する」という思想を根幹に、互いの心が通じ合い、各自の正当な権益が守られ、闘争のない平和的な社会を指している。

一方、中国問題の専門家たちは、中国共産党の独裁理論は孔子のこのような儒学理念に根底から背いていると、口を揃えて非難する。

孔子を完全批判してきた中国政府はなぜ、孔子を大々的に宣伝し始めたのか。その理由について、専門家たちの見解も大筋で一致している。つまり、政権の統治力が弱まり続ける中、孔子を命綱として利用して国民に民族主義を植え付け、それによって政権を固めようとしているのである。

1989年に武力弾圧された大学生民主運動「六・四天安門事件」の真相究明を絶えず訴えている活動家・黄_qii_氏は大紀元の取材に対して次のように語った。「中国政府は、孔子を宣伝し始めているが、皮肉にも中国伝統文化に対する破壊を、ひと時たりとも止めたことはない。巨額投資でもって国外に孔子学院を乱立しているのは、孔子への侮辱だ。その実質は孔子の名を語った、諸外国に共産党文化を浸透させるための政府宣伝機関に過ぎず、その宣伝方法も滑稽な寸劇にほかならない」

また中国の経済学者で儒学研究者でもある綦彦臣氏は、中国政府は孔子とその学説を真に受け入れようとしているのではなく、国際社会が孔子を漢学理論の代表的な存在と見なしており、とても名高い人物だからだと指摘する。

綦氏は大紀元の取材に対して次のように述べた。「当局は孔子という無形資産の商標権を乱用しようとしている。これは非常に低俗なやり方だ。この時代に中国共産党が国際社会でマルクス・レーニン主義を語れば、まったく相手にされないはず。根底から悪の理念だと認識されているからだ。だから、当局はハイテク武器を模倣するというやり方と同様に、孔子を悪用し始めており、共産党文化を粉飾して政権のイメージ向上を図ろうとしている。孔子学院は、文化交流の看板を掲げて各国を騙す手段となっている。場合によってはスパイ機関と化している」

 (記者・駱亜、翻訳編集・叶子)
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