北朝鮮で暴動散発 中国当局、デモ「封じ込め法」を北へ伝授
【大紀元日本2月25日】反独裁の民主革命が中東地域に広がる中、最近、中国との境界線を中心とする北朝鮮領内で当局に対する住民の抗議行動が散発的に起きている。これに対して危機感を強めた金正日総書記は、「暴動鎮圧の別動隊」を新設するとともに、当局にとって「好ましくない現象」が出現したら「容赦なく鎮圧せよ」と命じたという。一方、中国の孟建柱・国務委員兼公安相が先週、北朝鮮を訪問した際に、携帯電話の盗聴技術などを含め、反政府運動を封じ込めるための方法を北朝鮮側に伝授したという。
孟建柱公安相、デモ「封じ込め法」を伝授
エジプトのムバラク大統領が退陣した2日後の今月13日から、孟建柱公安相が3日間にわたって北朝鮮を訪問した。
23日付の韓国紙・中央日報は外交情報筋の話として、孟公安相が平壌を訪問した際に、金正日総書記に対してチュニジアやエジプトの政権崩壊の背景を伝えるとともに、北朝鮮における反政府運動を封じ込める方策などを協議したと報じた。
同情報筋によると、北朝鮮当局は中国公安当局から体制維持に必要な情報を得ており、さらに、北朝鮮の国民が外国に情報を流出させることや、外国から情報が流入することを監視・傍受するため、携帯電話の盗聴技術も教わったという。
北朝鮮はその後、通話に対する直接盗聴や、携帯電話の取締り強化を実施し、民主化運動に対抗するキャンペーンを推進することによって、デモ発生の可能性を摘み取る行動に乗り出したという。また先月から北朝鮮当局は、来訪する外国人客への携帯電話のレンタルサービスを中止したとも報道されている。
しかし一方では、中朝共同の情報遮断にもかかわらず、北朝鮮国民はすでに中東で起きている反政府運動の情報を入手し始めているという。韓国ニュースサイト・デイリーNKの18日の報道は、北朝鮮情報筋の話を引用して、「一部の北朝鮮国民は中国のテレビを通じて、または、脱北者の家族からエジプト政変などの状況を知り、民衆の間でも情報が広がっている」と伝えた。
北朝鮮で暴動散発 金正日、デモ鎮圧用「別動隊」を設ける
今月16日の金総書記の誕生日に前後して、中国との境界線を中心とする北朝鮮領内では、住民による抗議活動や衝突が散発的に起きている。
韓国紙・朝鮮日報によると、中国との国境地帯に位置する新義州(シニジュ)で18日、数百人が参加するデモが発生した。市場での警察の取り締まりに対して不満がつのっていた民衆が、金総書記の誕生日に約束されていた食糧配給が実施されなかったことへの怒りを爆発させたものという。これに対し当局は、国家安全保衛部と軍隊を投入し、「残酷な手段」をもって鎮圧。デモ参加者の少なくとも4、5名が死亡し、数人が負傷したと伝えられている。
また、23日のラジオ自由アジア(RFA)によれば、今月初め、咸鏡北道・清津で保安署長が、何者かに投げられた石に当たって死亡する事件が起きている。今月14日にも、平安北道の3地域で、住民数十人が電気と米を求める騒動が発生しており、さらに今年初めには、咸鏡北道で、薪をすべて回収した山林監督員3人が、生活苦にあえぐ住民によって殺害される事件も起きている。
デイリーNKは23日、中東の反政府運動・暴動が北朝鮮へ波及することを警戒した金正日総書記の指示により、今月初め、各地区の人民保安局に百人規模による「暴動鎮圧の別動隊」を新設させたと伝えた。金総書記は指示文のなかで、「国際社会を席巻している事態に高い警戒心を持ち、どんな状況にも直ちに対処する体制を備えなければならない」と強調するとともに、「好ましくない現象が出現したら、地域、対象かまわず、容赦なく鎮圧せよ」と命じたという。
北朝鮮の民衆、「相互告発」から「かばい合い」へ
北朝鮮に密かに広がる抗議運動の背景には、北朝鮮の民衆が、互いに密告し合うかつての「相互告発」から「かばい合い」の関係へと変わったことがある。
金総書記の誕生日を2日後に控えた14日夜に平安北道の定州市、龍川郡、宣川郡で起きた騒動では、街頭に出た民衆が、新聞紙をラッパ状に丸めたメガホンを使って、「もう耐えられない。電気をよこせ。米を出せ」と一斉に大声を上げたという。
後に国家安全保衛部が、この騒動の「首謀者」の捜査に乗り出したが、住民は「怖くてじっと家にいたから、誰が叫んだか知らない」などと口を閉ざしているため、首謀者探しは難航しているもよう。
政府への抗議活動が水面下で広がりを見せている北朝鮮。その北朝鮮当局は、中東の民主化の大波が、今まさに東アジアへ押し寄せるのではないかと脅威を感じている。そして北朝鮮と中国、それぞれの現政権は、同じ一党独裁体制を延命させるために、互いに手を取り合い、死力を尽くしていると窺われる。