幸福の尺度

 

【大紀元日本1月1日】「国家の安寧は…国家収入からは測り知ることはできない」

 1934年、国家収益を初めて算出する試みの中で、ノーベル賞を受賞した経済学者サイモン・カズネットは米議会に警告している。

 半世紀も前にビートルズは歌っていた。「お金はあまり好きじゃない。お金では愛を買えないから」( I don’t care too much for money. Money can’t buy me love) レノン&マッカートニー作 Can’t Buy Me Love (1964年)

 ブータンでは、1972年、当時のジグミ・シンゲ・ワンチュク 国王が、「国民全体の幸福度」を示す“尺度”として、国民総幸福量(Gross National Happiness, GNH)または国民総幸福感を提唱している。

 最近では、11月にキャメロン英首相が、「経済成長にとどまらず、生活向上の尺度が必要」と提案。生活水準だけでなく生活の質を測る方法を模索している。スプレッドシートから幸福度をとらえることは不可能であり、具体的な裏づけを通して、政府が国民の安寧を向上させる方法を理解する上で、幸福指標は必要だとしている。

 英フィナンシャルタイムズの12月27日付けの論説でティム・ハーフォード氏は、国家安寧の測定として三つの方法が挙げている。

 ▼国家収益に国家安寧を反映させるよう調整をはかること▼国家安寧に関わるデータを収集すること(これには平均寿命、自殺率、収入の不均衡などが挙げられる)▼「1から10の数値を利用して、自分がどの程度豊かであるかを教えてください」というように、 国民がどう感じているかを尋ねる。

 実際に人に尋ねる方法にも、満足度を尋ねるのでなくその日のムードを把握する方法もある。人々の一日の出来事とそれに伴う感情経験を調査する一日の再構築方式 (DRM:day reconstruction method)は、心理学者シュバルツ氏、経済学者で元米財務省のチーフエコノミストのクルーガー氏、心理学者カーネマン氏が編み出したもの。一言で多様なことは表現しつくせない。生活の満足度と体験やムードは異なるという発想に基づく。

 クルーガー氏、 カーネマン氏 は、国家収益と併用して時間消費方式(time accounting measures)を発表することも提案している。この方式は、不幸な心の状態にどれだけの時間を費やすかを測るもので、その時に行っていること、例えば通勤、仕事なども記録する。研究者は、交通の便や公園の設備に投資すべきかなど、政策の査定に利用できるとしている。

政策に直接役立つかどうかは別にして、国民総生産の数字だけにこだわることは無意味であることは確かだ。フィナンシャルタイムズの同論説に興味深いグラフがあった。国民の購買力に対する生活満足度を示すもので、2003年のグラフではあるが、各国の比較が明確に示されている。日本の購買力はかなり高いが、ブラジルやメキシコに比べ、生活への満足度はやや劣る。 最も多くの人口を抱える中国のGDPは高いが、満足度はインドやパキスタンより低い。 現在の中国では、国民の満足度に気を配るような調査はまず行われないだろう。

(鶴田)

生活満足度(3−8の数値)と国民1人あたりの購買力で表したGDP (log scale)との相関関係(資料:Angus Deafon: Penn World Table: Gallup World Poll)

 

 

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