間髪をいれず【1分で読める故事成語】

【大紀元日本8月8日】「坂井の第一着に、趙は間髪をいれず白2と打ちつけた。黒3に対してもすぐ白4。黒の少考、ノータイムの白、という応酬が黒9まで続いた」

趙とは、囲碁の25世本因坊・趙治勲で、2008年の坂井秀至七段との対局の様子を綴った某紙の観戦記である。長考で知られる趙が、まずは「間髪をいれず」に小気味よく打ち返してのスタートであったという。

ところで、「間髪(かんぱつ)とは一体どんな「髪」なのか。長い間不思議に思っていたが、正しくは「間(かん)、髪(はつ)を容(い)れず」だとわかり、いたく納得したものである。その語源となった故事は次の通り。

前漢の時、呉王・劉濞(りゅうひ)が漢に恨みを持ち謀反を起こそうとした。すると、郎中の枚乗(ばいじょう)がそれを諌めてこう言った。「王の行為は、糸に千鈞もの重りをつけ、際限なく高いところから計り知れないほどに深い淵に吊り下げるようなものです。一旦糸が切れてしまうと二度と出られないでしょう。出ようにも、【その隙間は髪の毛一本も入らないほどです】」(『説苑』正諌より)

この故事の【 】でくくった部分の中国語原文は『間不容髪』、つまり、「間(隙間)には、髪を容れることもできない」ということで、空間的に非常に狭いことを言った。それが日本語に定着する中で、「少しの時間も置かない」ことを言うようになったと考えられる。

ところで、「間髪をいれず」の語源がわかったところで、はたと思い至った。「寸前のところ」を意味する「間一髪」はこのことわざから派生したのではないかと。

(瀬戸)