【大紀元日本7月25日】「健康」とはどのような状態を意味するのか。WHO(世界保健機関)は健康について「身体・精神・社会の面で良好な状態で、たんに病気あるいは虚弱でないことではない」と定義している。これによれば身体の他にも精神・社会の状態も良好でなければ人は健康な状態とは呼べないということがわかる。近年WHOが行った調査によると、世界中で3分の1の人が何らかの心理的な問題を抱えており、日本人も約3分の1が憂うつな気分を経験しているという。
厚生労働省によると、うつ病患者は1996年から2008年までの9年間で2.4倍になった。この間、うつ病治療に使われる精神安定薬や睡眠薬の国民使用率も上昇している。現代医学・科学の発達により医療は進歩したが、人が薬に依存する傾向が強くなり、精神的にもろくなって病気にかかりやすくなってしまった。現代人は、その解決法を模索している。
精神の健康を重んじる古人の修めた「道」
現代の物質重視社会とは反対に、古人は精神を重んじていた。古代中国では、琴・将棋・書道・絵画の4つの芸術「琴棋書画」を精神の健康に良いものとし、心を修め徳を養うものであると考えていた。しかし、それは同時に、情と欲に溺れさせ、心身に損害をもたらすものであるとも古人は認識していた。この点は、自己表現を主とする現代芸術と大きく異なっている。
芸術とは心を修めさせ、かつ情欲を溢れさすもの―。古人は両者のバランスの取り方こそが自然の特性そのものを反映させる「道」であると悟っていた。今日の日本文化の中にもその思想の痕跡は残っている。書道・茶道・華道などがそうであるように、文化や芸術活動は「道」に従わなければならない。
残念ながらこの「道」を体現した文化芸術の真髄は、稽古する教室の一角に限られ、日本人の日常生活からは徐々に薄れてきている。代わりに、現代人の浮わついた心を表し、五感を激しく刺激するような現代音楽や踊りが、私たちの生活に染み付いている。
舞台鑑賞で心を健康に
そんな中、人に健全な精神を与え、心を落ち着つかせるある芸術活動に私は日本で出会った。まさに舞台の芸術鑑賞で「道」に入る体験だった。それは、伝統芸術の復興を趣旨としながら東西の古典芸術を融合したスタイルが注目されている「神韻芸術団」だ。
神韻芸術団の公演には奇抜なものはなく、演目の多くは古代中国の有名な物語であるため、日本人でも親しみやすい。クラシックバレエのステップや中国の京劇の動きとも異なり、神韻の公演で見られる中国古典舞踊は、高度な技巧を必要としながらも豊富な表現力を兼ね備えている。そのため人物の性格、喜怒哀楽のみならず、複雑なストーリーまでが表現されている。
神韻の公演を見た人は、言葉で表現できないような感動を覚える。これは演目のストーリー性に起因するものではなく、まるで旅路で長くさまよっていた旅人が、やっと目的地への道しるべを目にしたかのような感覚だ。心が洗われたような気持ちになる神韻芸術団の公演は、現代人にこの上ない心理的な健康をもたらすことができるだろう。
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