三峡ダムがもたらす環境・自然災害、収拾のつかない事態になる可能性=中国環境問題専門家

【大紀元日本12月4日】中国長江の中流域に建設中の三峡ダムにより生じた社会問題や、自然環境への破壊などが益々深刻になっている。専門家は、この国家建設プロジェクトは科学の問題と言うより、政治の問題として当局に扱われていると指摘し、過ちをあまり認めない中国当局は、このダム建設から生じる自然災害などの問題をさらに深刻化させ、最終的には収拾のつかない事態に至るのは間違いないと警鐘を鳴らした。

同ダムは1993年に着工し、2009年に完成する予定。1980年代、同ダムの建設問題が取り上げられてから、専門家からは、深刻な地質問題、自然災害を起こし、沿岸の環境汚染を憂慮する声が上がっていた。

ダム建設により生じた一連の問題

1.貧困層に転落した「三峡移民」

ダム工事に伴い強制移転を余儀なくされた住民の数は140万人に及ぶ。これらの「三峡移民」の多くは充分な補償も受けられないまま、貧困層へと転落、社会問題となっている。中国当局は今年9月、2020年までに、さらに230万人を移転させると公表した。

2.水質汚染や、生態系への悪影響

2003年にて同ダムでの貯水が始まり、当初から指摘されていた長江沿岸の水質汚染や、生態系への悪影響などの問題が浮き彫りになった。一部の水域で、大腸菌群や浮遊物による汚染が発生しているのも明らかにしている。

専門家らは、三峡ダムの水没地及び周辺地域からの汚染物質の流入により長江流域、黄海の水質悪化、および生態系への悪影響を懸念している。2002年以降、日本沿岸で大量発生し、深刻な漁業被害をもたらしたエチゼンクラゲについて、その異常繁殖の要因は、三峡ダムによる汚染との説が浮上している。近年、四川盆地での深刻な干ばつも、同ダム建設が招いた結果であると環境問題の専門家は指摘している。

3.大地震や、大規模水害を誘発する危険性

専門家が、蓄積された水の重さにダム付近の岩盤や地質が耐え切れずに強い「地震」を引き起こすのではと指摘している。また、内部情報筋によると、中国当局は1993年から同ダム周辺の地質調査を行っているが、その関連資料が国家極秘機密となっている。地質学専攻の温家宝・総理も地震の危険性を非常に憂慮しているという。

2003年貯水が始まってからわずか1ヶ月、付近の秭帰県沙鎮渓鎮で大規模の地滑りが発生した。中国当局は死者24人と公表したが、ドイツの国際放送局ドイチェ・ヴェレ(Deutsche Welle)が四川省在住の地質学者・範暁氏の情報を引用、被災地の農民の証言により、死者が約100人に達したなどと報じた。

万一、何らかの理由でダムが決壊した場合、長江流域に未曾有の大惨事をもたらすのは避けられない。

昨年5月20日に行われた同ダムの完成式典には、胡錦濤・国家主席や、温家宝・総理などは出席していない。この国家規模の国策事業の節目において最高指導部が欠席するのは、中国では極めて異例であり、その背景が注目されている。

三峡ダムの初期の建設企画に参加していた王維洛氏=ドイツ・ドルトムント大学国土計画学博士=は同ダムの建設について、中国当局が政治問題として扱い、根本から科学的理論に乖離している、と指摘、「一貫して過ちを認めない中国当局は、このダム建設から生じる自然災害などの問題をさらに深刻化させ、最終的には収拾のつかない事態に至るはず」と述べた。

同博士は、「今となっては、ダムを爆破し、取り壊す最後のチャンスである。これから数年が経つと、ダムに土石などが溜まるため、この作業ができなくなる」と指摘しながらも、中国当局が三峡ダムの建設問題を解決する可能性はほぽないと、悲観的な見方を示した。その根拠について、同博士は以下のように明かした。

「この世界最大の水力発電ダムの建設について、中国当局は当初から、社会主義の優越性を表すと宣伝してきた。1986年、当時の故・趙紫陽元総書記が政権内部のダム建設反対の意見を憂慮していたが、_deng_小平・元国家主席が、これは政治問題であり、どんなに反対されても必ず三峡ダムを建設すると主張した。1992年、第7期全人代第5回会議にて三峡ダムの建設を採決する際に、最高指導部の主要メンバーの江沢民は共産党の代表に対し、支持票を投じるよう指示した。最終的に、3分の2の共産党代表が支持票を投じ、建設が最終決定された」。

(翻訳/編集・叶子)
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