50歳を過ぎると、多くの人が退職後のゆったりとした生活や快適な毎日を楽しみにするようになります。その一方で、代謝の低下や、落ちにくいお腹の脂肪、加齢によって起こるサルコペニア(加齢に伴う筋肉量や筋力の低下)のリスクを心配する人も少なくありません。そのため、適切な食事と運動習慣を見つけることが重要になります。
体重が増える原因は代謝が遅くなることだと思われがちです。私が司会を務める番組「Healthy Journey with Amber(アンバーと巡る健康の旅)」では、このテーマについて王思恒医師に話を伺いました。
王医師は、2021年に学術誌『サイエンス』に掲載された研究を紹介しました。この研究では、基礎代謝は20歳から60歳まで比較的安定していることが示されています。本当の問題は、脳が食欲を適切にコントロールできず、食べ過ぎにつながることにあると王医師は述べています。
食欲のコントロールが難しくなる理由
現在では、肥満は脳による食欲調節機能のバランスが崩れた状態を反映する疾患であると考えられています。
王医師によると、人間の体には心拍数や呼吸、体温などを精密に調節する高度な仕組みがあります。しかし、体重のコントロールははるかに難しく、脳が「もう十分に食べた」という満腹のサインを正しく受け取れなかったり、それに適切に反応できなかったりするため、必要以上に食べてしまうことがあるといいます。
意志の力だけで食欲を抑えるのは非常に困難です。実際、午後以降の食事を抜いたり、間食を控えたりといった方法だけで減量に成功する人は10%未満に過ぎないと王医師は付け加えました。
そのため、食欲を無理に抑えるよりも、「どのように食べるか」を学ぶことが大切だといいます。
脂肪を減らすには、「食事が80%、運動が20%」という考え方が基本であり、成功の鍵は食事管理にあると王医師は説明しています。
現代の食生活では、揚げ物やソース、油脂、さまざまな添加物が多く使われた高度加工食品(加工度が高く、添加物を多く含む食品)が多く、これらは高カロリーで食べ過ぎを招きやすくなっています。摂取カロリーを抑えるためには、できるだけ自然な状態に近い食品を優先し、高度加工食品はできるだけ控えることが勧められます。
体が筋肉をつくる仕組み
一方、筋肉づくりにおいては、脂肪を減らす場合とは逆の考え方になると王医師は言います。
筋肉づくりでは、「運動が80%、食事が20%」の考え方が基本になります。筋肉を増やすためには、体に運動という刺激が必要です。人間の体には「使わなければ失う」という原則があり、運動をしなければ、筋肉をつくるための生物学的なシグナルは発生しません。しかし、運動によって筋肉に負荷がかかると、脳が体に対してタンパク質を利用し、傷ついた筋肉を修復して新しい筋肉組織をつくるよう指令を出します。
運動を始める最も効果的な方法の一つは、ジムでトレーナーの指導を受けることです。専門家のもとで行うトレーニングは、より計画的で安全に進められます。
筋力トレーニングでは、扱う重量そのものが最も重要というわけではありません。重い負荷でも軽い負荷でも筋肉は成長します。重要なのは、筋肉が疲労する直前まで十分に負荷をかけられているかどうかです。
例えば、高重量では3〜5回しか持ち上げられなくても、1回ごとの負荷が非常に大きいため筋肉の成長を促します。一方、軽い重量で20〜30回繰り返せる場合でも、最後の数回が非常につらく感じられるほどであれば、同様に筋肉の発達を促すことができます。しかし、トレーニング全体を通して楽に感じ、疲労感がほとんどない場合は、運動強度が不足しており、十分な効果は期待できないと王医師は述べています。
下半身の筋肉を鍛えることが重要
50歳を過ぎた人がサルコペニアを防ぐうえで最も重要なのは、「下半身のトレーニング」だと王医師は話します。移動能力が低下すると、健康状態や生活の質(QOL)に大きな影響を及ぼします。
トレーニングでは、大腿四頭筋だけでなく、体の中で最も大きな筋肉である大殿筋、太ももの裏側の筋肉、ふくらはぎの筋肉も鍛える必要があります。
近年のトレーニングでは、個々の筋肉だけを鍛えるのではなく、「ファンクショナルトレーニング(実際の動作に役立つ運動)」が重視されています。例えばスクワットは、一度の動作で複数の筋肉を同時に鍛えられるだけでなく、関節の安定性も高められるため、非常に効率の良いトレーニングです。
スクワット:一つで多くの効果が得られる運動
ファンクショナルトレーニングの中でも、スクワットは特に効果的な運動の一つです。脚やお尻の筋肉を鍛えながら体幹も使うため、バランス能力や可動性が向上し、座る・立ち上がる・階段を上るといった日常生活の動作も楽になります。
ステップ1:足を肩幅、またはやや広めに開き、つま先を少し外側へ向けて立ちます。腕は自然に下ろしても、前へ伸ばしても、胸の前で組んでも構いません。体幹に力を入れ、背筋をまっすぐ保ちます。
ステップ2:息を吸いながら体幹に力を入れ、息を吐きながら椅子に座るようにお尻を後ろへ引いてしゃがみます。膝はつま先より前に出ないようにします。太ももが床と平行になるまでしゃがみ、立ち上がるときに息を吸います。膝は常につま先と同じ方向を向くようにし、内側へ入ったり外側へ開き過ぎたりしないよう注意してください。
応用編:水の入ったボトルやダンベルを持ちながら行うことで、運動強度を高めることができます。
50歳を過ぎてからの健康的な老化とは、単に体重を減らすことではなく、「脂肪を減らしながら筋肉を維持すること」です。自然な状態に近い食品を選び、食欲を上手にコントロールし、筋力トレーニングを日常生活に取り入れることで、筋肉量や脂肪量など身体を構成する要素を改善し、移動能力を維持しながら、長く活動的で自立した生活を送ることができます。
(翻訳編集 井田千景)
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