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プロテインブームの裏側 ──「高タンパク」表示と超加工食品の注意点

今やたんぱく質(プロテイン)は「ヒーロー栄養素」とされ、スーパーマーケットを歩けば、クッキーやパスタ、シリアル、ベーグルなどに「高たんぱく」のラベルが目立ちます。大手コーヒーチェーンでは高たんぱくラテが登場し、飲料コーナーでも高プロテインウォーターがオンラインや大型店舗で販売されるようになっています。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると、多くのアメリカの成人はすでに推奨されるたんぱく質摂取量を満たしていますが、実際に自分に必要な量を把握していない人が79%にのぼります。そのため、マーケティングやSNSの流行に左右されやすく、「健康的な食事」を求める動きと、フィットネス、体重管理、全体的なウェルネスを支えるスナックの需要が高まったことで、1,170億ドル規模の世界的な産業が形成されました。これらはすべて、プロテインの人気に支えられているのです。

しかし専門家たちは、超加工食品に追加されたたんぱく質の摂取は、かえって健康に悪影響を及ぼす可能性があると指摘します。特に、私たちがすでに摂取しているカロリーの56%がそうした加工食品から得られている現状では、肥満死亡リスクの上昇にもつながるとされています。たんぱく質という単一の栄養素に注目しすぎることで、健康維持に必要な他の栄養素が豊富に含まれる自然由来の食品を見逃してしまう恐れもあります。
 

高たんぱく傾向

もともとはボディビルダーや一部のフィットネス愛好家に好まれていた高たんぱく志向は、1990年代後半に一般にも広がり、爆発的な人気となりました。プロテインが流行語のようになると、クラフトやゼネラルミルズといった大手食品企業もこの動きに注目し始めました。

私たちもその影響を受けています。国際食品情報評議会(IFIC)の「Food & Health Survey」によれば、過去4年間で「意識的にたんぱく質を摂取しようとする」人の割合は62%から70%に増加しています。

グローバル投資会社Manna Treeのマネージングディレクター、タイラー・メイヤラス氏は、Z世代の健康意識の高さがプロテイン人気を後押ししていると述べます。「Z世代は非常に健康への関心が強く、特にプロテインについてよく話題にしています」と、彼はエポックタイムズに語っています。

また、プロテインは今もなお「減量の切り札」として注目されています。マッキンゼー&カンパニーの報告では、アメリカとイギリスの消費者の27%が「体重管理が非常に難しい」と感じているとの結果が出ています。メイヤラス氏によれば、多くの人がオゼンピックのようなGLP-1作動薬に頼るようになり、結果として食事量が減少しているとのことです。

「カロリー摂取量を大きく減らすなら、より栄養密度の高い食品を選ぶ必要があります」と彼は言います。「だからこそ、人々はたんぱく質、食物繊維、ビタミン、他のマクロ栄養素に注目するのです」

それに応じて、食品メーカーも1食あたりのカロリーが少なくても栄養価が高い高たんぱくスナックや食事を開発・提供するようになっています。

こうした複合的な要因が絡み合い、「追加たんぱく」を主な売りにした数多くの製品が市場に登場しました。
 

なぜたんぱく質が必要なのか

たんぱく質に注目が集まるのは、実際に体にとって不可欠な栄養素だからです。「体は家のようなもの」と語るのは、カナダの登録栄養士キャロル=アン・ロバート氏。「家を建てるにはレンガなどの建材が必要で、たんぱく質がその役割を果たします」と説明しています。

体は食事から摂ったたんぱく質をアミノ酸という「レンガ」に分解し、それをもとに細胞や組織を構築する新しいプロテインを合成します。

たんぱく質は、消化、エネルギーの利用、神経伝達、筋肉の収縮、免疫機能のサポートにも関わっていますが、多くの人が筋力アップ、疲労軽減、体重管理を目的に、意識的に摂取量を増やそうとしています。

しかし登録栄養士のマーク・リフキン氏は、「必要量をすでに満たしている人がさらに摂取しても、栄養的な利点はない可能性が高い」と指摘します。

過剰なたんぱく質摂取にはデメリットもあるのです。
 

たんぱく質過剰のリスク

高たんぱくの食事は多くの人にとって大きな問題にはなりませんが、ロバート氏は「重要なのはたんぱく質の摂取源です。摂取する食品の多様性を損なっていませんか?」と問いかけます。

栄養・運動科学の専門家で、アメリカ栄養士会フェローでもあるデビッド・ゴールドマン氏は、こうしたトレードオフを「プロテイン・レバレッジ」と呼びます。彼は「たんぱく質を意識するあまり、他の食品に含まれる重要な栄養素を見落としてしまう」と警鐘を鳴らします。

「たんぱく質入りのクッキーを食べても、それはあくまで『クッキー』です」とリフキン氏は述べます。「加工食品であることに変わりはなく、たんぱく質を加えたからといって、突然健康食品になるわけではありません」

しかし、実際には多くの人がたんぱく質に「健康的」というイメージを持っています。実際、高たんぱくと表示された包装食品が塩分、糖分、脂肪を多く含んでいても、消費者の38%がそれを「健康的」と見なしています。

「最終的に、こうした製品の人気や販売の高さは、その品質によるものではなく、消費者がマーケティングに影響されやすいからです」とリフキン氏は語ります。

このような「脆弱性」は、健康を損なう可能性があります。ロバート氏は「加工の過程で、私たちが気づかない栄養素や有益な化合物が失われてしまう」と話します。

「私たちは栄養についてすべてを理解しているわけではありませんし、単一の食品についても同様です」と彼女は言います。「例えばリンゴを見ても、それと同等のサプリや食品を作ろうとしても、何かしら抜け落ちてしまうのです」

また、アメリカには腎疾患を抱える人が約3,550万人おり、たんぱく質の過剰摂取が腎臓への負担を増やす可能性もあります。たんぱく質は腎臓の濾過作業を促進し、血液中の老廃物除去を担うため、過剰な濾過が腎組織を傷つけ、慢性腎疾患の進行を早めてしまう恐れがあります。
 

本当にどれだけ必要なのか?

1980年代に定められたたんぱく質の推奨摂取量(RDA)は、体重1kgあたり0.8gでしたが、近年では一部の健康専門家がこれを大きく上回る量を推奨しています。TikTokなどのSNSでは、高たんぱくレシピや「1日に食べるもの」の紹介動画が人気を集め、視聴者の摂取意欲を刺激しています。

ロバート氏も、RDAでは実際の必要量を満たせていない可能性があると認めつつ、推奨量については「健康の目標や活動レベルによって異なる」と慎重な姿勢を示しています。

「健康な成人では、1日あたり体重1kgにつき1.2g、運動量の多い人や減量中の人では最大2.4gが目安になります」と彼女は述べています。たとえば、体重約68kgの一般的な成人であれば、1日あたり約82〜123g、アスリートやカロリー制限中の方なら136〜164gが目安です。

ゴールドマン氏は「スナック食品から多くのたんぱく質を摂ろうとしている人ほど、自分がどれだけ摂取しているかを把握していない」と指摘しています。そして今、私たちは「とにかく多く摂ることが正解」というような「たんぱく質信仰」の渦中にあると述べています。
 

自然な高たんぱく食品への代替

ロバート氏は、豆類、レンズ豆、ナッツ、種子、豆腐、ゆで卵など、全体食品または加工の少ない食品からたんぱく質を摂取することを推奨しています。メイヤラス氏も、「たんぱく質を摂るうえで理想的なのは、単一成分で構成された食品だ」とし、コテージチーズや有機牛肉などを例に挙げています。

これらの食品は、たんぱく質に加えて、健康を支えるビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養素も豊富に含んでいます。野菜、果物、全粒穀物といった栄養価の高い食品とバランスよく組み合わせることで、加工スナックに頼らずともたんぱく質摂取の目標を達成することができます。

「食事ごとにたんぱく質がしっかり摂れる選択肢を見つけることが大切」と、リフキン氏はアドバイスします。

とはいえ、リフキン氏もロバート氏も、一部の状況では加工たんぱく製品を取り入れることに否定的ではありません。たとえば、プロテイン強化パンケーキミックスは、食欲が低下している高齢者にとって、既に慣れ親しんだ食品から栄養を得る手段になり得ます。また、少しだけ加工されたプロテインスナックや即席食も、旅行中や忙しい日には「携帯できるサプリ」として役立つと、ロバート氏は述べています。

ただし、日常的な習慣としては、リフキン氏は「超加工食品は、あくまで加工食品としてそのまま楽しむべきだ」と強調しています。

「クッキーはクッキーのままでいいのです」と彼は語ります。「すべての食べ物が病気を治さなければならないわけではありません」

(翻訳編集 日比野真吾)

10 年以上にわたってダイエット、健康、ウェルネスについて熱心に研究しているフリーランスのライター兼健康コーチである。彼女の記事は、Vitacost の The Upside ブログに定期的に掲載されており、NutritionStudies.org や Green Queen Media でも取り上げられている。