ハンタウイルス・パニック・マシン 希少疾患がメディアの劇場と化すとき
解説
定期的に、大衆は新たな微生物の脅威に直面する。そのパターンは常に一定だ。悲劇的な死や集団感染が発生すると、ニュース編集室は「死のウイルス」「謎のアウトブレイク」「懸念を強める保健当局」といった劇的な言葉を動員する。ソーシャルメディアが公衆の恐怖をさらに増幅させ、公衆衛生機関が慎重な声明を出すと、ジャーナリストはそれをしばしば煽情的な表現に言い換える。数日のうちに、それまでその用語すら知らなかった人々が、文明を滅ぼすような流行が差し迫っていると確信するに至る。今月、その対象はハンタウイルスだ。テレビをつければ、この「新しい病気」を描き出すニュース番組が溢れている。
大半のアメリカ人にとって、ハンタウイルスは新しい病気ではない。それは何十年も前から存在しており、特にネズミなどの齧歯類(げっしるい)に接触する機会の多い農村地域で見られてきた。医師、とりわけ呼吸器・重症管理医学の専門家は、1990年代からハンタウイルス肺症候群(HPS)を認識している。当時、アメリカ南西部で発生した重症呼吸器疾患の集団発生を受け、調査官たちはシカマウスが媒介する「シンノンブレウイルス」を特定した。それ以来、米国における確定症例の総数は極めて少ないままである。CDC(疾病対策センター)のデータによれば、全国で30年以上にわたる累計症例数は、ようやく1千件を超える程度だ¹。この事実だけでも、現在のメディア報道を特徴づけている感情的なトーンを再考する根拠となるはずである。
関連記事
パナソニック創業者・松下幸之助が掲げた「水道哲学」と儒教の「仁」の思想の響き合いを描いた一文。モノづくりを通じて人々の生活を支え、社員の人格を育んだ希代の経営者の哲学と、その真意に迫る
中国による南太平洋への弾道ミサイル発射と米豪への影響、それに応じたインドの軍事・外交的対抗策、そしてトランプ政権下での米国の孤立主義回帰による「インド太平洋戦略」の変容と今後の国際情勢を解説する
UNRWAの浸透問題と対イスラエル偏重の決議、過去の不祥事が示す国連の構造的な不信。責任はなぜ上層部に届かないのか
倒産寸前のセラミックス工場から2つの世界的大企業を創り上げ、78歳で日航(JAL)再建を果たした稲盛和夫。「人間として何が正しいか」を問い続け、生涯をかけて体現した「敬天愛人」の真諦に迫る
『論語』学而篇から治国の本質を解き明かす。晏嬰の信義、漢文帝の節約、召公の愛民という歴史的逸話を通じ、真の善政とは「無事」を極めることにあると提示。時代を超えて響く孔子の徳治思想を紐解く