ニコール・フリンさんは長年、自宅の裏庭でレモングラスを育ててきました。主な理由は、素晴らしい香りと虫除け効果だと言います。しかし、スープやお茶のために収穫しているこの植物が、今では腫瘍学の研究室で注目されています。その有効成分は、研究者も予想していなかった働きをしています。健康な組織を傷つけることなく、がん細胞の増殖を遅らせ、場合によっては止める可能性が示されているのです。
栄養療法と健康回復の専門家であるフリンさんは、レモングラスを再発見している家庭料理家やウェルネス実践者の一人です。
「東南アジア料理や植物中心の料理を探求する人が増えるにつれ、レモングラスはアメリカのキッチンで人気が高まっています」と彼女はエポックタイムズに語りました。「手に入りやすいこと、新鮮な風味、消化を助ける働きが、裏庭でも日常の食事でも魅力的な存在にしています」研究はまだ前臨床段階で、人を対象とした試験は行われていませんが、結果は有望です。
レモングラスは複数のがん細胞に作用する
西インドレモングラスは、軽やかで爽やかな香りと強い薬理作用を持っています。主要な活性成分はシトラールで、強いレモンの香りと多くの治療的作用のもとになっています。
レモングラスにはネラール、ゲラニアル、ゲラニオール、ネロールも含まれており、これらが一緒に、抗菌、殺虫、抗細菌、抗真菌、抗酸化、抗ウイルス、抗がん作用を示す化学的特性を形成しています(実験室条件下)。
レモングラスオイルの抗がん作用の中心となるシトラールは、複数のメカニズムで働きます。がん細胞にアポトーシス(プログラム細胞死)を誘導し、がん細胞の増殖周期の特定の段階で成長を停止させ、がん幹細胞を抑制し、がん細胞の移動や浸潤(転移)を減少させます。
多くの前臨床研究で、レモングラスの強力な抗がん作用が確認されています。
『Integrative Cancer Therapies』に掲載された研究では、レモングラスエキスが大腸がん細胞を殺し、化学療法の効果を高めるかどうかが調べられました。以前の研究では、レモングラスエキスがリンパ腫細胞を殺すことが示されていました。
研究者たちは3つの方法で検証しました。培養皿のがん細胞に対して、人の大腸がん腫瘍を移植したマウスに対して、そして遺伝的に腸腫瘍ができやすいマウスに対してです。
実験室では、レモングラスはアポトーシスを誘導してがん細胞を殺し、用量が多いほど、また曝露時間が長いほど効果が高まりました。より重要なのは、多くの従来のがん治療(化学療法など)と異なり、レモングラスは健康な細胞を傷つけなかった点です。
大腸がん腫瘍を移植したマウスでは、レモングラスが腫瘍の成長を有意に遅らせ、忍容性も良好でした。遺伝的に腫瘍ができやすいマウスでは、レモングラスを与えた群で腫瘍の数が少なく、予防効果の可能性が示唆されました。
別の2025年の研究では、レモングラス精油を7つのがん細胞株(大腸、乳房、肝臓、肺、腎臓、口腔、脾臓)に対してテストしました。いずれの場合も、がん細胞の成長を遅らせたり停止させたりし、必要な濃度は比較的低濃度でした。
同研究では、レモングラスを微生物や複数のがん細胞株に対してテストし、強い抗酸化活性と有意な抗菌効果(真菌Alternaria alternataの完全抑制を含む)を確認し、抗菌、抗酸化、抗がん活性が測定可能であると報告しました。
最終的に、この研究はレモングラス精油が実験室研究において抗菌、抗酸化、抗がん特性を持つことを示しました。結果は有望ですが、人において同じ効果が得られるかどうかを確認するには、さらなる研究が必要です。しかし、この結果は、どの植物に今後さらに研究すべき化合物が多く含まれているかについて、科学者に重要な手がかりを与えています。
レモングラスは人を対象とした研究でも、特に口腔ケアと皮膚科学の分野で、抗菌作用や抗炎症作用が調べられています。レモングラス配合のうがい薬が歯肉炎の管理や口腔プラークの減少に役立つこと、レモングラス茶が血圧低下に役立つ可能性があること、レモングラス精油がふけや皮膚の一般的な真菌感染症(白癬)の治療に役立つ可能性があることが研究で示されています。また、人を対象とした研究では、レモングラスのアロマセラピーが歯科治療時の不安を軽減することも示されています。
研究室以前の長い歴史
レモングラスは、中医学の体系の中で何世紀にもわたり、世界各地で独立して用いられてきた記録があります。中医学では「香茅」と呼ばれ、温性で辛味・甘味があるとされています。古典的な本草書にも登場し、少なくとも唐の時代(618~907年)から使われてきました。伝統的には、精神を落ち着かせ、熱を清め、気(エネルギー)を巡らせ、消化を助け、発熱や頭痛に対応し、ストレス、不安、うつへの対処に用いられてきました。
インドの伝統医学アーユルヴェーダでも、数千年にわたり同様の目的で使用されてきました。消化不良、呼吸器のうっ血、発熱、神経の緊張などに用いられてきたのです。
西洋ハーブ医学では、レモングラス精油は特に関節炎の痛みの緩和や、抗菌・解熱目的で用いられます。呼吸器系に働きかけてうっ血、痰、毒素の排出を促し、消化管の運動を調整して膨満感やけいれんを和らげます。
レモングラスの摂取方法
レモングラスは、食材としても、また必要に応じて用いるものとしても、さまざまな方法で取り入れることができます。
「レモングラスはスープやカレーなどの料理によく使われ、鶏肉、魚、牛肉、海鮮料理の付け合わせとしても使われます」とフリンさんは言います。
お茶として取り入れる方法もあります。いれ方は、沸騰したお湯180mlをレモングラスの葉小さじ1~2杯に注ぎ、10~15分蒸らします。こして飲んでください。
キッチン以外では、レモングラス精油をディフューザーで拡散したり、お風呂に入れたり、マッサージオイルに希釈して使ったりできます。皮膚トラブルには湿布として使われることもあります。レモングラスは強力な虫除けとしても知られ、庭で育てるほか、油を衣類や皮膚に塗って使うこともあります。ただし、皮膚に塗る場合は必ず希釈してください。
レモングラスは一般的に安全とされていますが、いくつかの注意点があります。
「ほとんどの人は問題なく使えますが、イネ科アレルギーがある人、消化が非常に敏感な人、妊娠中の人は大量摂取に注意してください」とフリンさんは言います。
レモングラスには主に2種類あります。西インドレモングラスは料理と多くの薬用目的に使われます。東インドレモングラスは主に香水や美容製品に使われます。レモングラスは同じ属のシトロネラグラスと混同されやすいため、探す際は正しい植物を選んでください。
いつも通り、持病がある場合、薬を服用している場合、妊娠中・授乳中の場合は、料理に使う量を超えて使用する前に、信頼できるハーブ専門家や医療専門家に相談し、安全に使用してください。
まとめ
裏庭の菜園と腫瘍学のあいだには大きな隔たりがあります。しかし、研究ではレモングラスに含まれる化合物に、さらなる研究に値する生物学的特性があることが示唆されています。それまでは、これまで通り、風味豊かで香り高く、多用途なハーブとして、長い伝統的使用の歴史と、今では小さいながらも着実に増えている科学的データをあわせ持つ存在であり続けています。
フリンさん自身は、臨床試験の結果を待っているわけではありません。
「裏庭の鉢で育てています。素敵な香りがするだけでなく、蚊を遠ざけてくれるのです」
(翻訳編集 日比野真吾)
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