もしあなたが歯磨きのたびに歯ぐきから出血しているなら、それは単なる歯の問題ではないかもしれません——実は、あなたの心臓の健康を脅かしている可能性があるのです。
最新の研究によると、歯ぐきの炎症を引き起こす細菌は、感染した歯ぐきから血流に入り込み、心臓組織に侵入することで、不整脈のリスクを高めることがわかりました。不整脈は、脳卒中や心不全と密接に関係しており、見逃すことのできない健康リスクとなっています。
歯周病が心臓に与える影響とは
この研究成果は、2025年3月『Circulation(サーキュレーション)』誌に発表されました。報告によると、「ポルフィロモナス・ジンジバリス(P. gingivalis)」と呼ばれる細菌は、歯ぐきの感染を引き起こすだけでなく、血流に入り込んで心臓に到達し、心臓に瘢痕を生じさせることで、不整脈(心房細動)のリスクを高める可能性があると示されました。
研究では、心房細動の手術を受けた68人の心臓組織を調査したところ、多くの患者の左心房にポルフィロモナス・ジンジバリス菌が存在することを確認しました。とくに重度の歯周病を抱える患者の心臓では、この細菌が見つかる割合が高かったといいます。
さらに、研究チームがこの細菌をマウスに感染させたところ、感染マウスの心臓でも細菌が確認されました。未感染のマウスに比べて、心房細動などの不整脈が発生するリスクが6倍上昇したことがわかりました。
研究者たちは、ポルフィロモナス・ジンジバリス菌が口腔内から血流を経て心臓に侵入するという明確な証拠が示されたのは、今回が初めてであると述べています。
「歯周炎と心房細動の因果関係はまだ不明だが、血流を介した歯周菌の拡散がこれらの病態を結びつけている可能性がある」と、研究の第一著者である宮内俊介氏はコメントしています。また、炎症が悪影響の一因であることにも言及しました。
宮内氏はさらに、「ポルフィロモナス・ジンジバリス菌は、歯周病によって血流に乗り、左心房に達します。そして、歯周病が重症であるほど、心臓内にこの細菌が多く検出される傾向が見られます」と説明します。
細菌が心房に到達すると、瘢痕組織を形成し、それが心房細動のリスクを高めると考えられています。ただし、歯周治療によりこの細菌の「侵入口」を塞ぐことができるため、心房細動の予防や治療にもつながるとしています。
歯ぐきの感染に対して免疫システムが反応すると、化学物質が分泌されて血液に入り込み、全身に炎症を引き起こし、心臓を含む臓器にもダメージを与える可能性があります。研究者たちは、心臓の組織や心臓弁、動脈内の脂肪沈着物の中にも、このような有害な細菌を確認しました。
「歯ぐきからの出血は、歯肉炎の明確なサインです」と、ラスベガスのDrs. Chin and Pharar歯科クリニックの歯科医師で院長のジェシカ・ファラール氏はエポックタイムズの取材で語りました。「歯ぐきが真っ赤に腫れている場合は、歯肉炎が進行している可能性が高いです」
「とくに他の健康問題、特に炎症性疾患を抱える人は、歯肉炎にかかりやすい傾向があります」とファラール氏は補足し、「朝晩の丁寧な口腔ケアに加えて、定期的に歯科医の診察を受けることが、口腔全体の健康維持には不可欠です」と強調しました。
歯周病が及ぼす広範な影響
研究者たちは、長年にわたって医師の間で「歯周病患者は、心臓の問題を抱える割合が高い」と指摘されてきたことに注目しています。最近のメタアナリシス(複数研究の統合解析)によれば、歯周病の患者は心房細動を発症するリスクが30%高いことが明らかになりました。世界的に見ると、心房細動の患者数は2010年の3,350万人から2019年には約6,000万人に倍増しており、歯周病がその増加の一因となっている可能性があります。
「歯周病はアメリカにおいて依然として重大な公衆衛生問題であり、成人のおよそ5人に2人が何らかの歯周病に影響されています」と、ニューヨーク市の歯科医師サンディープ・サチャール(Dr. Sandip Sachar)氏はエポックタイムズの取材に答えています。治療されていない歯周病は、心臓への影響だけでなく、全身の健康にも悪影響を及ぼすといいます。
また、歯科医のファラール氏は「歯周病菌がどこに定着しても、それが健康リスクとなる可能性がある」と警鐘を鳴らしています。
研究はさらに、慢性的な歯ぐきの感染が以下のような全身性疾患と深く関係していることを示しています。
糖尿病
「歯周病と糖尿病には相互関係があるようです」とサチャール氏は述べています。「血糖コントロールがうまくいかないと歯周病が悪化し、逆に治療されない歯周病が血糖値を上げてしまうことで、糖尿病全体の治療がより複雑になります」
アルツハイマー病および認知症
中等度から重度の歯周病は、認知症やアルツハイマー病のリスクを高めることも、複数の研究で示されています。これは、歯周病によって引き起こされる全身性の炎症や感染の広がりが原因とされています。炎症反応が全身に及ぶことで、脳にも影響が及び、神経細胞が損傷し、認知機能の低下リスクが高まると考えられています。
その他の症状との関連
いくつかの研究では、歯周病と特定のがんリスクとの関連性が指摘されています。具体的には、胃がん、食道がん、大腸・直腸がん、肺がん、膵臓がんなどが含まれます。
「歯周病は、関節リウマチや呼吸器系の問題、肝疾患、そして妊娠におけるリスクとも関係があります」と、サンディープ・サチャール氏は述べています。「未治療の歯周病は、早産や低体重出生児とも関連しており、口腔内の炎症が胎児の発育にも影響を与える可能性があるのです」
「人工関節の置換手術を受けた患者が、口腔内の衛生状態を保てていない場合、新しい関節に感染が及ぶ恐れもあります」と、歯科医師のファラール氏も注意を促しています。
とはいえ、これらの症状は予防・治療・さらには改善も可能です。サチャール氏は次のようにアドバイスしています。「少なくとも年に2回は歯科医のもとで専門的なクリーニングを受け、毎日の朝晩の歯磨きとフロスを欠かさず行うことで、歯ぐきの健康をしっかり維持することができます」
(翻訳編集 華山律)
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