めまい・不眠・アレルギーは肝からのSOS 春の養生で肝をいたわる方法

56歳のある教授が、最近突然めまいや吐き気、嘔吐の症状を訴えました。お腹周りが大きく、中医学でいう「痰湿体質」――つまり体内の代謝機能がやや弱く、余分な水分や脂肪がたまりやすい体質に当たります。脈を診ると、手首の脈が張りつめた弦のように感じられ、これは肝のエネルギーが滞って熱を帯びているサインとされます。このような症状を防ぐには、春の時期に肝を養うことが大切だといわれています。

カナダの康美中医診所の所長であるJonathan Liu氏は、エポックタイムズの取材でこの症例を紹介し、次のように述べています。現在、北方の一部地域ではまだ寒さが残り、体感的には冬のようですが、植物はすでに芽吹き始めています。これは生命が目覚め、万物が成長し始めていることを示しています。人の体も同様に、内側から外側へと目覚め、調整していく必要があります。しかし、生活リズムが季節の変化に合っていない場合、たとえばストレス過多や過労、生活の乱れなどがあると、春にはめまい、不眠、感情の不安定など、肝に関係する症状が現れやすくなります。
 

肝の不調の主なサイン

「春に肝を養う」という考え方は中医学の養生観の一つで、肝は全身の循環や代謝の調整に関わり、感情の安定や消化機能、血液の巡りとも深く関係しています。

Jonathan Liu氏によると、中医学では「天人合一」を重視し、古人は自然の変化を長く観察することで「春は生じ、夏は成長し、秋は収まり、冬は蓄える」という生命のリズムを見出しました。人も自然の一部であり、宇宙や昼夜の巡りとエネルギー的に影響し合っています。もし体が季節の変化にうまく適応できないと、次のような反応が現れやすくなります。

1.疲れやすい

春になると強い眠気やだるさを感じる人が少なくありません。これは冬の間にエネルギーを使いすぎ、十分に休養できていないことが関係している場合があります。中医学でいう「冬は蓄える」とは、体力や気力を蓄えることを意味します。これが不足していると、春の活動的な時期に体がついていきにくくなります。逆に、しっかり蓄えられていれば、春は自然と元気に過ごしやすくなります。

2.睡眠の乱れ

疲れに加えて、不眠や睡眠の質の低下が見られることもあります。特に更年期前後の女性は、肝血不足の影響で眠りにくくなることがあります。「肝血」とは肝を養う栄養のことで、不足すると顔色が優れない、爪に縦筋が目立つ、目が乾きやすいなどの症状が見られる傾向があります。

30代のある女性の例では、長女として厳しく育てられたことから精神的な抑圧が強く、肝の熱がこもり、気の巡りが滞っていました。その結果、動悸や不眠が顕著になり受診しました。鍼治療で肝の気の巡りを整えたところ、しばらくして睡眠の質や動悸の改善が見られました。

3.めまい

春は気温が上がり、体の活動や代謝も活発になります。その分、肝は分解や合成、代謝の働きをより多く担うため、負担が増えやすくなります。中医学の経絡理論では、肝のエネルギーは頭部へと上がるとされており、バランスが崩れるとめまいや頭痛などの不調につながることがあります。

4.春のアレルギー

アレルギー性鼻炎、じんましん、皮膚の敏感さなどが代表的です。現代医学では、皮膚や粘膜がアレルゲンに触れることで免疫反応が起こると考えられています。一方、中医学では、体の防御力が低下していると外部の影響を受けやすくなり、アレルギー反応が起こりやすくなると考えます。これは冬の休養不足やエネルギーの蓄え不足とも関係している場合があります。

そのため中医学では「未病を防ぐ」という考え方を重視し、春には生活習慣や食事を整えることで、体が季節の変化に順応しやすくなるよう勧めています。
 

中医学の処方でストレスを和らげる

肝はストレスの影響を受けやすい臓器とされており、肝をいたわるためには、まずストレスを軽減し、気持ちを穏やかに保つことが大切です。

中薬も感情の調整に用いられることがあり、たとえば気の巡りを整える代表的な処方に逍遙散があります。「逍遙(しょうよう)」とは心がのびやかである状態を指し、臨床研究では、がん患者の心理的な状態の改善に寄与する可能性が示されています。

ただしJonathan Liu氏は、薬だけに頼るのではなく、考え方や心の状態を見直すことも重要だと強調します。「以前、私の師が『薬だけが整っても、人の心が整わなければ効果は十分に発揮されない』と言っていました。治療は体だけでなく、心にも向き合うことが大切です」と述べています。
 

消化機能から肝を整える

感情面に加えて、もう一つ重要なのが食事です。中医学では、肝の不調はまず消化器系に現れるとされ、肝を整えるためにも消化機能の強化が重要と考えられています。

1.酸味は控えめ、甘味は適度に

五行説では、五つの要素が臓腑や季節、感情、味覚と対応しています。肝は酸味、消化器(脾胃)は甘味に対応します。つまり酸味は肝に、甘味は消化機能に作用すると考えられます。

春は適量の酸味はよいとされますが、摂りすぎるとバランスを崩す可能性があります。一方、穀物や山芋、さつまいも、ナツメ、はちみつ、果物など、自然な甘みのある食材は消化機能のサポートに役立つとされています。ただし、砂糖の摂りすぎは逆に負担となるため注意が必要です。

2.香りのある野菜

ニラ、ニンニクの芽、ほうれん草、セロリ、ナズナ、ネギなど、自然な香りや辛味を持つ野菜は、巡りや代謝を促し、長期的なストレスによる心身のこわばりをやわらげるのに役立つとされています。

研究では、ニンニクの芽に含まれる成分に、血行促進、疲労軽減、抗炎症、抗菌、代謝調整などの作用がある可能性が示されています。

3.薬膳で肝を養う

党参(とうじん)、クコの実、山芋、黒ごまなど、比較的穏やかな性質の食材がおすすめとされています。肝を養いながらも消化器に負担をかけにくく、過度な滋養による不調を避ける助けになります。

党参は生薬の一つで、抗炎症や抗酸化作用が示唆されており、研究では肝がん細胞の増殖を抑える可能性も報告されています。

4.お茶

長く安心して取り入れやすい飲み物として、ローズとなつめのお茶が紹介されています。気分の安定やストレス緩和、血を補う働きが期待され、感情の揺れが大きい人や睡眠が安定しない人、顔色が優れない人に向いているとされています。

作り方:乾燥したバラの花3~5g、種を取ったなつめ2~3個を熱湯で浸出します。好みに応じて少量の氷砂糖を加えてもよいでしょう。

5.充実していても油っこくしない

Jonathan Liu氏は、春の食事は「充実していても油っこくしない」ことが大切だと述べています。肉と野菜のバランスをとり、食べ過ぎを避けることで、消化への負担を軽減し、全体の代謝バランスを保つことにつながります。

ここで紹介した中草薬はなじみが薄いものもありますが、健康食品店やアジア系食材店で入手できる場合があります。ただし体質には個人差があるため、具体的な使用については専門家に相談することが望ましいとされています。
 

長期的な調整:治療は三割、養生は七割

イギリスの栄大夫中医診所の院長・舒栄氏は、エポックタイムズの取材で「治療は三割、養生は七割」と述べています。これは、鍼や中薬などで体のバランスを整えるのが「治療」であり、実際の回復に大きく影響するのは日々の食事や生活習慣、感情のコントロールといった「養生」であるという意味です。

生活習慣が変わらなければ、どれほど良い治療でも効果は長続きしにくいと考えられます。肝に関する不調に向き合う際は、通院や薬だけに頼るのではなく、日常の過ごし方を見直すことが重要です。

(翻訳編集 解問)

王嘉儀