最近、ネットでは「何も入れていないお湯(熱すぎない温かいお湯)を毎日1杯飲むだけで、ダイエットや美肌、喉の痛みや生理痛の緩和まで期待できる」といった健康法が広まっています。水分補給が体にいいことはよく知られていますが、こうした効果は本当にあるのでしょうか。ここでは専門家の見解をもとに見ていきましょう。
オーストラリアのクイーンズランド大学の地域健康・福祉学教授ローレン・ボール氏と、サザンクロス大学の講師で管理栄養士でもあるエミリー・バーチ氏は、The Conversationへの寄稿で、「大切なのは水の温度ではなく、しっかり水を飲むこと」だと指摘しています。
両氏によると、健康へのプラスの影響は、水の温度そのものよりも、水分摂取量が増えることや、規則的で健康的な習慣を続けること、あるいは温かさによるリラックス効果などから生まれている可能性が高いそうです。つまり、水そのものや日々の習慣のほうが、水の温度よりも重要だと考えられます。
水は、温かくても冷たくても、私たちの体にとって欠かせないものです。十分な水分をとることで、消化や血液の流れ、腎臓の働き、血圧の調整、そして体全体の健康維持に役立ちます。
ただし現時点では、水分補給の効果を除いて、お湯が常温水や冷たい水より特別に優れた健康効果を持つという研究結果は確認されていません。
迷信1:お湯はダイエットに効く?
研究によると、水をしっかり飲むこと自体は体重管理に役立つ可能性があります。食事前の満腹感が高まったり、甘い飲み物や高カロリー飲料を控えやすくなるためです。ただし、お湯が他の温度の水よりダイエットに有利だという十分な根拠はありません。
一部の小規模な研究では、温かい水が腸の動きを促して消化を助ける可能性も示されていますが、その効果は大きいとは言えず、脂肪が減ることの説明にはなりません。
つまり、お湯を飲むことで甘い飲み物を減らせたり、水分摂取量が増えたりすれば、結果としてダイエットの助けになることはありますが、脂肪を「燃やす」のは水の温度ではない、ということです。

迷信2:お湯で肌がきれいになる?
現時点では、お湯を飲むことで肌質が改善したり、「デトックス」ができたりするという直接的な科学的証拠はありません。
もちろん、しっかり水分をとることは肌のうるおいを保ち、乾燥を防ぐうえで大切です。ただし、肌の健康に関しては、お湯が特別に優れているわけではないとされています。
また、「お湯で体の毒素が流れる」という考え方は誤解を招きやすいものです。体内の解毒は肝臓や腎臓が担っており、お湯で洗い流すような仕組みではありません。
そのため、肌のためには十分な水分補給が大切ですが、水の温度自体は大きなポイントではないといえます。
迷信3:お湯で喉の痛みや生理痛がやわらぐ?
温かい飲み物は、喉の痛みをやわらげたり、鼻づまりの軽減に役立つことがあります。また、温かい空気や蒸気は粘液をゆるめ、喉や気道の刺激を和らげる効果も期待できます。
ただし、こうした働きはお湯だけのものではありません。温かいお茶やハーブティー、レモン水などでも同じような効果が得られます。いずれも「温かさ」と「水分補給」の両方が関係しています。
つまり、お湯や温かい飲み物は喉の不調の原因そのものを治すわけではありませんが、つらい症状をやわらげる助けにはなります。
一方、生理痛については、お湯を飲むだけで痛みが軽くなるわけではありません。ただし、生理中にしっかり水分をとることで、体内の水分の滞りによる不快感が軽減される可能性はありますが、これも水の温度とは関係ないと考えられます。
なお、湯たんぽなどでお腹を温めると、血流がよくなり筋肉がゆるむことで、生理痛やけいれんの緩和につながるとされています。

1日にどれくらい水を飲めばいい?
アメリカ国立医学アカデミーによると、十分な水分摂取は健康や生活の質にとってとても重要です。最近では、水分不足や軽い脱水が慢性疾患のリスクと関係している可能性も指摘されています。
目安として、女性は1日約2.3L、男性は約3.3Lの水分摂取が推奨されています。これには、果物や野菜などの食事からとる水分も含まれます。
ただし、必要な水分量は環境や体の状態によって変わります。妊娠中や授乳中、運動量が多い場合、暑い場所で過ごす場合などは、より多くの水分が必要です。
また、水は多く飲めばよいというものではなく、過剰に摂取すると体に負担がかかり、場合によっては命に関わることもあります。実際に2023年には、アメリカ・インディアナ州で女性が短時間に約2Lの水を飲み、水中毒で亡くなるというケースも報じられました。
台湾の中医師・胡乃文氏によると、水分が足りているかどうかは尿の色で簡単にチェックできます。透明で無色の場合は水分をとりすぎている可能性があり、薄い黄色であれば理想的な状態です。
濃い黄色からオレンジ色であれば水分不足のサインなので、早めに水分補給を心がけましょう。さらに濃いオレンジ色やコーヒー色に近い場合は、肝臓などの不調が関係している可能性もあるため、水を飲むだけで済ませず、早めに医療機関を受診することが大切です。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。